連載
UAにまつわるモノ
ユナイテッドアローズのスタッフ、また所縁のある方々に、“UAにまつわる思い出の一品”を紹介していただきます。第7回は、ロク・ディレクターの吉田 恵理子さんです。
Photo : Yohei Miyamoto
A.F.VANDEVORSTのワンピース
ROKU, WOMENS
モード×ヴィンテージスタイルの原点。
「90年代にベルギーのアントワープ王立芸術学院との良好なリレーションシップを築き、そこから輩出されたアントワープ6と言われたデザイナーをいち早く見出し日本で紹介していたユナイテッドアローズ。あの時代の原宿本店でしか見て触ることのできないデザイナーズブランドを求めて、原宿本店には多くのファッション関係者が訪れていました。その次世代ともいうべきだったのが、ラフシモンズ、ヴェロニク ブランキーノ、ユルギペルスーン、アンジェロ・フィグス、そしてA.F.ヴァンデヴォースト。ファッションの成熟度においてもまだ若かった私にとっては、次世代ブランドの方がリアルクローズとして着こなしやすかったんです。そしてバイヤーになり、たしか私の最初のバイイング時だったような気がします。まだ右も左もわからず、自分のバイイングが合っているかも確信が持てなかった時期。イタリアのクラシックなブランドからメゾン(マルタン)マルジェラやドルチェ&ガッバーナとバイイングブランドは多岐に渡り、そのなかで栗野さんとアントワープ王立芸術学院の卒業ショーに伺える機会がありました。そこでウォルター(・ヴァン・ベイレンドンク)やアン・ドゥムルメステール、ドリス・ヴァン・ノッテンなどと時間を共有できるすばらしい機会に恵まれ、ファッションと静かに対峙しながらも内に秘めた彼らのエネルギーは物凄く、そして温かく、そんなアントワープの人たちの人柄に触れたことからこそ、思い入れが強かったのかも。なかでも、カップルでデザインをしていたアンとフィリップによるA.F.ヴァンデヴォーストは、“自分の好き”と初めて重なったブランドだったと記憶しています。これは、アメリカンフットボールのジャージをドレッシーに解釈した一着。肩パッドが入った鮮やかなグリーンのワンピースは背中が大きく開いていて、フロッキー加工でナンバリングされたヌーディなストレッチチュールをインナーに着る提案。パンクなメッセージ性と女性らしさがギュッと詰まっていました。同じ時期に毎週末古着屋を廻って、インスピレーションだけを頼りにたくさんの古着を買い漁り、ラグジュアリーではない、ハイエンドなモードとヴィンテージを組み合わせてリアルクローズとして着る自分のスタイルができあがり、それが現在のロクのセレクトにも繋がっています」。
PROFILE
吉田 恵理子
ロク・ディレクター
1995年入社。ユナイテッドアローズ 原宿本店や有楽町店などで販売スタッフを経て、1999年に商品部へ異動。バイヤー、MDを経験した後、ビューティ&ユース ユナイテッドアローズの立ち上げに携わる。その後二度の出産を経て、現在は育児と仕事を両立させながら、ロクのディレクターを務める。