ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

モノ

2016.05.30 MON.

アフリカの伝統工芸を日本の街並みに馴染ませる、
新しいモノづくりのかたち

ユナイテッドアローズが「エシカル・ファッション イニシアチブ/Ethical Fashion Initiative(以下EFI)」とコラボレーションし、ファッションを通じて開発途上国を支援し始めたのは、2013年のこと。その意義や難しさ、各国の文化をそのままプロダクトに落とし込むことの魅力、今後の展望などを追求し、同企画のキーマンであるクリエイティブディレクション担当兼上級顧問の栗野宏文さんに、改めてお聞きしました。

Photo:Takeshi Wakabayashi
Edit:Masato Kurosawa

「NOT CHARITY, JUST WORK」という精神に魅かれる。

アフリカや東南アジア地方で根強く残る貧困問題。開発途上であるが故に生じる貧富の差や、今だに蔓延する女性差別、先進国間との不公平なトレード等々……そうした世界的な社会問題の解決を、“ファッション”を軸にして行うという試みが、エシカル・ファッション イニシアチブです。栗野さんは、ユナイテッドアローズが日本のブランドや小売店として初めてこのプロジェクトに参加するきっかけになったのは、同プロジェクトが掲げる“NOT CHARITY,JUST WORK”というスローガンに共感したからだと明言します。

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「途上国が抱える諸問題を是正する、と聞くと、とても高邁な試みに聞こえますが、ファッションというフィルターを通して行うからには、誰もが感性を揺さぶられる魅力を秘めたモノ作りが不可欠になってきます」。
ファッションに携わるプロとして抱いたその確信は、同プロジェクトで作られるモノに反映されています。開発途上国で継承される伝統的なモノ作りの技法を活かしながらも、常に念頭に置いているのは、“自分たちが欲しいと思えるか”、“都会の風景に馴染むか”といったこと。伝統的な技法を駆使しただけの“単なるお土産”になってしまうような製品しか作れないのならば、ファッションを通した社会貢献の意味がないと言います。プロジェクトへの参画の話を受けた当初は、そうした魅力的なモノ作りができるかどうか確信が持てなかったそうですが、実際にケニアやマリ、ブルキナファソといったアフリカ諸国を訪れて、各地の伝統工芸を見て確信したのだとか。

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「伝統工芸品の素晴らしさや格好良さに心を奪われ、これなら単なる“チャリティー=慈善”としてではなく、現地の方々をリスペクトしながら、“ワーク=仕事” “ファッション商品”としてお取り引きさせていただける、そう確信しましたね」。

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豊かな自然が育んだ色彩感覚が生む、唯一無二のプロダクト。

現在日本国内でファッションとして流通している製品は、欧州諸国やアメリカ、国内ブランドが手掛けているものが大多数を占めています。しかし、同プロジェクトに賛同し、アフリカ諸国と共同でモノ作りを進めるうえで、栗野さんはそのどの国や場所とも違うアフリカ独特の感性に深く魅了されていったのだそう。その独自のセンスを極力活かしながらも、都会にも違和感なく馴染むアイテム作りには、適度な距離感を保ったオーダーが必要になってきます。

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「例えばケニアでは昔からビーズを革に付ける技術に長けた女性が多く、実際に彼女達にビーズ製品を作っていただいているのですが、私たちはなるべく細かいオーダーはしないように心掛けているんです。緻密な設計図を元にして、色や柄まで細かく指定してしまっては、彼女達の感性が表出してきません。“ストライプにして下さい”とか“このくらいの大きさの柄に”という風に、アバウトなオーダーにすると、思いもよらない色使いのビーズ製品が出来上がるんです」。

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ケニアの自然界に育まれた色彩感覚でしか作れないビーズ製品は、既視感がなく、とにかく独創的。これだけユニークな配色や柄が施されたものは、バイヤー歴の長い栗野さんでも、なかなか目にできなかったそう。現地の方とのコミュニケーションも図れていた事から奇抜なものではなく、日本の街中で洒脱に愛用できる製品になったと、栗野さんは語ります。


アナログな織機でしか織り上げられない素朴な風合いが魅力。

ケニアのビーズ製品と同様に、ブルキナファソの織り物にも魅了されたという栗野さん。実際に現地に訪れた際は、生地を織る時に使う機械にも驚かされたそうです。EFIが契約しているドイツ人技師が、現地の人たちが自分の手でメンテナンスできるシャトル織機を提供したのがなんと、木とダンボールでできたもの。現地にある材料で定期的なメンテが実施できるというメリットがあり、何より現地の女性達にこのアナログな織機を使って手作業で織り上げてもらった生地は、何ともいえない素朴かつ独特な風合いに仕上がりました。

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いい意味で目が詰まりすぎていない生地は、見るからに柔和な雰囲気。現地ではラメなどが入ったきらびやかな織り物がトレンドだったところを、日本の街に馴染むようにシックな色合いにオーダーして、ジャケットやカーディガンといったベーシックなアイテムに落とし込むことで、既存の製品にない個性を秘めたアイテムに仕上げているのも、栗野さんやバイヤー、企画者達のチームのフィルターを通しているからこそ。同国の感性とモノとしての汎用性を両立させた製品作りは、密なコミュニケーションの賜物なのかもしれません。


伝統的な染色技法がよりオリジナリティを与える。

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これまで同プロジェクトではまだ直接訪れていないマリの伝統的な染色技法“ボゴラン”を駆使して作った生地もまた、他の国には見られない魅力を秘めています。ボゴランは泥などを使った染色技法なのですが、マリでは宗教的な伝統から、この染色工程に携われるのは男性だけとされています。現地ではボゴランの生地がたくさん販売されていますが、模様によって値段が全然違います。どうやらそれぞれの模様には、宗教的な意味が込められていて、現地の人々は縁起担ぎのような意味合いで生地を選んでいるらしいのです。

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アフリカの大地がもつ生命力をそのまま表現したような生地に魅了されながらも、実際にこの生地を使ってファッションアイテムを作るために、栗野さんはあえてできるだけ宗教的な意味合いが薄い模様を選んだそう。「今回作ったジャケットとパンツに使われている柄には、あえて深い意味のないものを選んでいるので、着用したままマリの方とお会いしてもビックリされないはずです(笑)」。

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各国のカルチャーをそのままプロダクト化するのが目標。

現在、EFIとのコラボレーション製品は、「TÉGÊ UNITED ARROWS」というコーポレートレーベルのもとリリースされていて、今後はユナイテッドアローズが手掛けるさまざまなストアブランドの垣根を越えて、同プロジェクトが浸透していく可能性もあります。“TÉGÊ”とは、アフリカのマリなどで使用されるバンバラ語で“手”を意味する言葉。アフリカ各国の伝統的な手工芸を元に一緒に製品作りしていく、という趣旨に合致していて、偶然にも日本語で“手芸(てげ)”とも読めることから“TÉGÊ”が誕生しました。

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ファッションを通した社会貢献として、つまりチャリティーではなくワークとして途上国の方々と向きあう場合には、当然利潤も求めなければならないけれど、実利だけを追求するのは絶対避けたいという栗野さん。重要なのは、できるだけ長期的な展望をもって取り組んでいくということなのです。
「簡単に言うと、とにかく“気長じゃないとダメ”ということですね(笑)。実際に大雨や病気など、さまざまな理由から納期が大幅にずれ込むこともあるので、目先の利益だけを追求していては、健全な取引なんて出来ないと思います。社内でも、そうした事情もふまえて同プロジェクトの概要を説明していますし、“TÉGÊ”に賛同してくれるストアブランドがあればいつでも手を挙げてもらえる体制は整えています」。

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実際に今シーズン初めて、「Odette e Odile」が同プロジェクトに賛同し、ブルキナファソの生地を使ったパンプスなどをリリース。栗野さんも、男性には強過ぎる配色も、女性ものになると優美と絶賛しています。
「今後も無理のない範囲で同プロジェクトと共作するレーベルが増えていけばいいと思いますし、一緒に製品作りする国も、アフリカだけではなく、ハイチやパレスチナ、カンボジアなど、どんどん広げていきたいと思っています」。
そう熱を込めて語る栗野さんの目には、未知の国の知られざる伝統工芸に巡り会うことへの期待で満ち溢れていました。各国の文化をファッションと融合させる、栗野さんの飽くなき挑戦は今後も続きます。

INFORMATION

TÉGÊ UNITED ARROWS

国連貿易開発会議と世界貿易機関の共同機関である国際貿易センター/International Trade Center(以下ITC)によって2008年に発足した非営利プロジェクト。「NOT CHARITY, JUST WORK」をスローガンに、ファッションを通じた経済的な自立を目標とした支援を行っています。

UNITED ARROWS 商品の一覧はこちら。
※記事にて紹介している新作は順次入荷いたします

Odette e Odeile 商品の一覧はこちら。

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