ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること ヒトとモノとウツワ ユナイテッドアローズが大切にしていること

モノ

2020.02.20 THU.

フィリップ・オーディベールのジュエリーはなぜ愛される!?
その理由を探るため、パリのデザイナーを訪ねました。

1989年にフランス・パリで創業して以来、一貫してハンドメイドにこだわったジュエリー作りを展開している〈フィリップ・オーディベール〉。シルバーやゴールドなどの良質なメタルパーツを駆使したエレガントな佇まいでありながら、手に取りやすいリーズナブルなプライスが実現されている同ブランドのジュエリーは、今や日本でもあらゆる世代の女性たちから高い支持を得ています。ここでは、ブランドの拠点であるパリのショールームを訪れ、ジュエリー=アートと捉えるデザイナーのフィリップ氏ご本人に話をうかがってきました。氏のモノ作りの根底に存在する、不変の思いを掘り下げます。

Photo Shunya Arai(YARD)
Text Kai Tokuhara

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―まずはフィリップさんのプロフィールについてお聞きします。フィリップさんはジュエリーデザイナーであり彫刻家でもありますが、どのようにしてそのクリエイティビティを身につけられたのでしょうか?

私はかつて、7年に亘って美術学校に通いながら、かなり早い段階でスカルプチャーに惹かれて彫刻家を志しました。そこで偉大な講師の方々からありとあらゆるファブリックや技術を学び、ゼロから美しい作品を作り出すノウハウを得ることができたのです。以来、モノ作りにおいては「全てのことが可能」だと信じる人間になりました。

―その出自や経験は、現在のジュエリー作りにどのように生かされていますか?

私はジュエリーのデザイン画を描き始める時、いつも壮大なモニュメントのようなものを想像するところから出発し、そのイメージを次第にミニマライズしていくのですが、やはりかつて彫刻に魅了された経験が頭の中でモニュメントを描く際に非常に生きていると感じています。

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―そのジュエリーデザインの元になっているというモニュメントは、どのようなものからインスピレーションを得ているのでしょうか?

主に50年代の建築ですね。特に、何人かの偉大な建築家たちは私にとって非常に重要なインスピレーション源となっています。すばらしいユルバニスム(都市計画)を生み出したアメリカ人のマレー・スティーブンス、とてもミステリアスで丸みのある建築を生み出したブラジル人のオスカー・ニーマイヤー、そしてフランス人ではやはり、より社会的な建築を作り出したル・コルビジェでしょう。彼らに共通点はありません。3人はそれぞれの人生において、純粋に他の誰かが想像もしないことを行いました。当時すでに存在したグローバルな思考に“NON”を突きつけたのです。また建築家ではありませんが、もう1人、彫刻家のボテロも挙げたいですね。女性的なボリュームや丸みが現れた彼の作品の外観は、ジュエリーデザインをする上での私の精神性に色濃い影響を与えてくれています。

―彼らの作品とはどのように出会いましたか?

旅ですね。なぜなら、旅は私にとってスポーツとともに欠かせない要素です。たくさんの国から国へと横断し、旅先ではよく歩き、ジョギングをする。そして可能な限りそれぞれの場所に長く留まり、そこに根を張ったものを観察する過程で私は多くの物事の本質を感じ取ります。時に文化的なもの、また時には人間的なもの。その両方が私のモノ作りの根本を形成してくれているのです。

―日本にはいらしたことはありますか?

もちろん ! 私は日本という国に代々受け継がれている伝統的な文化や、田舎の人々の穏やかな暮らしがとても好きですから。ただひとつ後悔があるとしたら、まだ富士山に登ることができていないことでしょうか(笑)。いつかはあの頂上にたどり着きたいと思っていますよ。

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―ここからはジュエリー作りについてより具体的にうかがっていきたいと思います。まずはブランドそのもののコンセプトからお聞かせください。

プロセス面でのコンセプトに関して言うなら、私たちのジュエリー作りは「Plein:満ち」と「Vide:空(から)」という私たちの周りにいつ何時も存在している対照的な要素が混ざり合うことで成り立っています。「満ち」はさきほどから申し上げている“巨大な建築的アイデア”、「空(から)」は“光”、すなわち“自由な空間”を表しています。

―あの美しい流線美やエレガントなテクスチャーはどのようにして作り上げているのでしょうか?

本質的に意識しているのは「滑らかさ」と女性的な「丸み」。そこは彫刻から学んだところが大きいのですが、その滑らかなフォルムとテクスチャーをあらゆるジュエリーで体現するために〈フィリップ・オーディベール〉のすべてのコレクションを手作業によって仕上げています。多くの時間を共に過ごしながら。

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―フィリップさんはいつもどこでデザイン画を描いているのですか?

いろいろな場所でデザインしますね。ここパリのセーブル通りにあるアトリエで描いたり、妻の故郷であるコルシカ島でデザインしたり、あるいは旅の飛行機の中でも行います。もちろん、パリの自宅でも。

―アトリエはパリ市内に?

はい。パリに点在する複数のアトリエで作業を行なっています。ゴールド、シルバーを加工するアトリエ、それらを回収して手作業で磨くアトリエなどがありますね。様々な工程を経て、その間何度も検品を重ねながら、時には完璧でない物をさらに再加工するなど、完璧な商品を作るために各アトリエのチームが高い水準のイメージを共有しています。ちなみに〈フィリップ・オーディベール〉のアトリエには、ブランドがスタートした1989年から30年に亘って働いてくれている職人たちもいますよ。彼らの経験というのも私たちのブランドの財産だと考えています。ひとつ、ここ数年で変わったことと言えば3Dを使うようになったことでしょうか。3Dプリンターは私たちに作るべきジュエリーの完成形をいち早く視覚化してくれるようになりました。しかしもの作りのプロセスそのものは基本的に30年間変わっていません。

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_NIA1422〈フィリップ・オーディベール〉のラインナップが揃うショップは、アトリエから徒歩3分ほど。入り口ドアの取っ手も職人によって作られている。

―コレクションの種類の豊富さには圧倒されます。そこもフィリップ・オーディベールというブランドの強みなのではないでしょうか。

私たちは1シーズンに大体200モデル作りますが、確かにそこも私たちの強みではありますね。しかし、たくさんのモデルを継続的に生み出していること以上に、全ての仕事を規則正しく行い、技術、製品管理などあらゆる点で高いクオリテイを維持できていることを誇りに感じています。また、それは我々に力だけではなく、ユナイテッドアローズをはじめとする素晴らしいビジネスパートナーたちがそこに導いてくれる点も付け加えておきたいですね。

―フィリップさんが「デザイン」で最も大切にしていることとは。

大きく3つの過程があります。まずはデッサンする時に大きなモニュメントをイメージする。次にそのイメージを手の大きさに戻し、そして3つ目のアプローチとしてさらにミニマライズさせます。そうすることで、ジュエリーが日常において機能的になり、何世代にも亘って身につけられるものになります。ジュエリーには芸術的精神が宿っていると同時に社会的機能が備わっている。私はその原理をとても愛しています。

―今季、ユナイテッドアローズが別注しているコレクションについてもうかがいたいと思います。それぞれどのようなジュエリーなのでしょうか?

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私は30年前から常にバレッタ(髪留め)を作っていますが、これはその当初に作っていたデザインを踏襲しています。インスピレーションはもちろん私たちのコレクションの軸となっている建築からです。建築物の屋根、さらには女性的な美しいプロポーションも想起させる「丸み」が特徴と言えますね。ユナイテッドアローズさんからこの特別なコレクションについての問い合わせをいただき、コラボレーションすることになりました。

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次にこちらのバレッタは、実は数年前からブランドのアイコニックなコレクションとして作っている「チェーン」の思考から来ています。だからチェーンを構成する2つのリンク(環)を連ねてバレットに仕上げるデザインは私にとってさほど難しいアイデアではありませんでした。チェーンはヴィンテージとロマンティック要素を掛け合わせたブランドのDNAのようなもので、重なる2つのリンクは「人生はまず2人で始まる」ということも意味しています。また、先ほどもジュエリーをデザインする前に大きなモニュメントを想像するとお話ししましたが、このバレットもジュエリー単体だけをよく見てみてください。きっと30mの高さのモニュメントさえ想像できることでしょう。

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チェーンのブレスレット。これも同じくデザインのコンセプトは明白でした。私たちにとってのチェーンは主に「自立をつなぎ合わせる」という思考を表現したアートワークの1つ。そして「滑らかさ」、「丸み」といったブランドが大切にしている要素をごく自然な形で組み合わせることができるアイテムであり、デザインの可能性は無限大とも言えます。だから私たちは永続的にチェーンを作り続けるのです。かつて私が日本の方々とお仕事をし始めた頃は、まだ女性がチェーンのジュエリーをつけるトレンドはなく、もっとデリケートなジュエリーが主流でしたけれど、近年はこのようなユニセックスなものを好まれる方も増えているそうですね。

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―最後に、ユナイテッドアローズのような日本のセレクトショップと仕事をすることで、フィリップさんご自身はどのようなメリットを得ていますか?

とても刺激を受けていますね。こうして毎シーズン日本からジュエリーのトレンドを探しにパリに来ていただけるおかげで、私たち自身も、自分のブランドのこれまでにない見せ方や提案性をより深く模索するようになりましたし、日本のマーケットも意識するようになりました。多くの日本の雑誌が取り上げてくださるようになったことも非常に喜ばしいことですね。これからも日本の皆さんの心に響くようなジュエリーを作り続けたいと思いますよ。

フィリップ・オーディベールのインタビュームービーはこちら。

PROFILE

フィリップ・オーディベール

1961年フランス・ボルドー生まれ。彫刻家としての活動を経て、1989年にパリを拠点にジュエリーブランド「フィリップ・オーディベール」を開始。以来、デザインから生産までモノ作りの工程のすべてをパリで行っている。パリ左岸のサンジェルマン・デ・プレ地区にブティックも構えている。

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