
ヒト
2020.01.23 THU.
キッズデザイナーとフラダンサー、2つのフィールドで活躍する女性デザイナーの信条とは。
「着られる時期が限られている子ども服は、そのときの思い出や親の気持ちが込められた素敵なもの」。そう語るのは、<ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング>(以下、GLR)でキッズデザイナーを務める矢後良子さん。専門学校生のときに夢見たキッズデザイナーになり、約15年。その一方で、ユナイテッドアローズの副業制度を利用して、プロのフラダンサーとして活動する、二足のわらじの生活を送っています。異なるジャンルで活躍する矢後さんの仕事に対する想い、副業制度についての考え方などを伺いました。
Photo:Kousuke Matsuki
Text:Kozue Takenaka
キッズデザイナーとしての熱い想いとこだわり。
―ユナイテッドアローズ入社前にもデザイナーとしての経験を積まれたそうですが、これまでの経歴を教えてください。
最初はウィメンズブランドのデザイナーをしていました。その後、通っていた専門学校の講師として1年間、パターン、デザイン、ソーイングを教え、他社でキッズデザイナーを4年間務めたのち、2007年にユナイテッドアローズに入社しました。その1年後、GLRのキッズデザイナーとなりました。子ども服のデザインをするようになって、15年ほどになります。
―矢後さんがキッズデザイナーにこだわる理由はなんですか?
専門学生のとき、母親が小さい頃に着ていたわたしの服を見せてくれたんです。子どもの頃の話をとても嬉しそうに話してくれた姿がとても印象的で、そういう母親の想いを子ども服をツールにして伝えたいという想いが芽生えました。
―何年も前の服を大切にとっておいたお母様、素敵すぎます!
わたしも驚きました。お気に入りだった洋服とはいえ、ボロボロなものもありましたからね(笑)。でも、そのときにしか着られない服にそのときの想いを託してくれたということがすごく嬉しかったのを覚えています。“一瞬しか着られないからこその思い入れ”のようなものにすごく惹かれました。
―子ども服は自分で着ることができないのでご苦労も多いかと思いますが、デザインすることで大変なことはありますか?
大人が着る服に比べて子ども服は、可愛いだけではなく実用性が試されます。パンツだったらたくさん動くのでストレッチがきいていてひざが曲げやすいか、Tシャツは繰り返し洗っても首が伸びにくいかなど…。自分では着ることができないので、社内でお子さんがいる方に協力してもらってサンプルを着てもらいチェックをしています。お母さん目線が大切なので、店舗からの声やリアルな実体験なども意見として取り入れてより良いものになるように努力をしています。そして、なるべく店頭へヘルプに行くように心がけて、直接お客様の声を聴くようにしています。
子ども服を通して、たくさんの人たちを笑顔にしたい。
―デザインをする際に大切にしていることはなんですか?
大人のトレンドを分析し、子どもらしさとGLRらしさをプラスしてデザインすることが大事なポイントです。それに加えてシーズンごとの子ども行事やイベントにマッチする商品づくりが重要だと考えています。子ども服はシーズンモチベーションがとても細かいので、そこにトレンドをうまくMIXさせていくというのが大人と違っておもしろいなと思います。デザインする時はGLRらしさと上品さを必ず意識するようにしています。大変なことも多いですが、知れば知るほど奥が深くて楽しいです。
―最近手がけたもので特にこだわったアイテムを教えてください。
ユナイテッドアローズらしいトラディショナルマインドを取り入れた物づくりを心がけ、卒園、入学式用のオケージョンスタイルに合う、ブラックウォッチチェックのアイテムをつくりました。ここ数年でGLRでのオケージョンの認知度が高まり、お客様にもGLRに行けば素敵なアイテムがあると言ってもらえるようになりました。男の子のジャケット&パンツからはじまり、一昨年から女の子のジャンパースカート、ブラウス、ボレロまで広がり、それがすごく好評で、あっという間に完売しました。生地もオリジナルでつくっているのですが、子どもなのであまり暗くならず、着心地も軽くなるようにというこだわりを持ちながらデザインしました。
―今後、手がけてみたいアイテムはありますか?
15年ほど子ども服を手がけてきて、つくっていないアイテムはほとんどないので…(笑)。ただ、好評だったもの、自分なりに納得したものはさらにいい服になるようにブラッシュアップしていけたらと思っています。
―ブランドにとって、デザイナーとはどんな存在だと思いますか?
子ども服のお客様は、実際に着るお子さんと両親はもちろん、おじいちゃんやおばあちゃん、プレゼントされる人たちも含まれますよね。その人たちに笑顔になってもらうのが大前提ですし、GLRチームの想いを形にしなくてはならないのがデザイナーだと思います。
趣味から仕事になったフラダンスが、日々のモチベーションアップに。
―デザイナーの傍ら、フラダンスを15年間続けていると伺いましたが、始められたきっかけを教えてください。
ダンスを習ってみたいなと思ったとき、フラダンスならできそうかな、ハワイも好きだし…と思ってはじめたのがきっかけです。そこからハマってしまい、今に至ります。フラには歴史があり、音楽や文化、スタイルなど、知れば知るほど好きになりましたね。プライベートでハワイに行くために仕事を頑張っている部分もあります(笑)。
―2017年にはタヒチの大会で優勝されたとお聞きしました。その時に先生からもらったネックレスを大切にされているそうですが、どんな思い出がありますか?
14金のプレートに「Clara」のネームが入り、タヒチのブラックパールつきのネックレス。これは先輩方がつけているのを見て、ずっと憧れていたもの。優勝した人だけがもらえるものだし、お金を出して買えるものではないので、肌身離さず着けている宝物です。先生やインストラクター、スタジオのみんなが応援してくれたという想いがつまっているし、踊れることに感謝する意味合いを持ったネックレスですね。両親が元気でいてくれて、主人や友人が応援してくれてはじめて、いまのわたしがあるので、そのすべてに感謝しています。
―まわりの方々が協力してくれるのは、すごくありがたいことですね! では、趣味で続けてきたダンスを副業としてやろうと決めたのはなぜですか?
習い事で通っていたスタジオ「Na Hoku O Kahealani」で先生からインストラクターとしてやってほしいと誘われました。迷いはなく、好きなことだったのでやってみようと思い、副業制度を利用することにしました。デザイナーの仕事が本業で、インストラクターの仕事は週1回、ショーダンサーの仕事は週2回ほど。自分のスケジュールで調整できるのでバランスよく両立できています。
―フラダンサーの副業をする前と後で、デザイナー業のモチベーションや意識などに違いはありますか?
デザイナーである自分とダンサーである自分のメリハリがつくようになりました。ダンサーのときは先生がくれた「Clara(クララ)」という名前でやっているので、スイッチがそこで切り替わり、クララというキャラクターを演じるような感覚です。ダンサーとインストラクターでも違いがあり、ダンサーはショーなので自分が楽しむのはもちろん、お客様に喜んでほしいという意識が強く、インストラクターはどうしたら生徒が上手になるか、自分よりも生徒に重きをおいています。必要とされることが励みになるしデザイナー業でも前向きになれます。モチベーションの方向は違えど、ポジティブになれるところ、人に喜んでもらいたい気持ちは、デザイナー業もフラも同じですね。
―とても忙しい日々を送っているかと思いますが、休日はゆっくりできていますか?
1日中なにも予定がないという日はほとんどなく、割と忙しく動き回っている感じですね。土曜日には自分が習う側のレッスン、日曜日の空いた日には美容室やマツエクなど、自分のメンテナンスデイという感じで、あっというまに終わってしまいます。フラの生活が日常化して踊り中心の毎日です。もちろん厳しいこともありますが、プロとして意識をしつつも、楽しさのほうが上回っています。
副業制度を利用することで広がった、自身の可能性。
―デザイナーとフラダンサーを両立する中で、気をつけていることがあれば教えてください。
いろいろありますが、1番は怪我をしないことですかね。大事なショーの前に怪我を伴うようなことはしないようにしています。あとは毎日なるべく0時前には寝て、両方の仕事に影響が出ないように気をつけています。ランニングや食事など、とにかく健康面は気をつけています。
―他社でも広がっている副業制度ですが、利用してみてどうですか?
以前よりも自分の可能性が広がってよかったです。ただ、もう少し世の中的にもフレキシブルに改革が進むといいなと思います。わたしの場合はたまたま趣味が仕事につながった部分がありますが、他の人たちも興味があることにはどんどん挑戦して、それが仕事につながれば理想的ですよね。わたしもまだまだ他にやりたいことはたくさんあります。なかなか忙しいかもしれませんが、重い腰をあげてトライしてみてほしいです。
―今後、デザイナー、フラダンサー以外に挑戦してみたいことはありますか?
いろいろあるのですが、まずは英語ですね。フラの先生やお友達、お客様に外国人の方が多いので、もう少しコミュニケーションがとれたらまた違った世界を見られるのかなと思います。旅行も好きなので、もっといろいろな国に行きたいと思います。
INFORMATION
PROFILE

矢後 良子
専門学校卒業後、他社でウィメンズ、キッズのデザイナーを経て2007年に入社。2008年よりデザイナーとしてGLRキッズの服づくりに携わる。そして副業制度を利用し、プロのフラダンサーとして所属するスタジオでのインストラクター業や、ハワイアンレストランでのショーへ出演するなど二足のわらじで多忙な毎日を送る。