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  • フォーマルの本質を味わえる、タキシードと着物の共通点。
  • 2016.01.04 MONDAY

ユナイテッドアローズ メンズのフォーマルディレクターとして商品企画やバイイングに携わる諸田さん。教科書通りの着こなし術だけではなく、“場のため、人のため”に装うフォーマルの心得やいろはを、私物のワードローブを交えながら語っていただきます。

Photo_Tatsunari Kawazu
Text_Keiichiro Miyata

日本人として豊かなライフスタイルを送るために、洋装と和装を使い分けたい。

ーフォーマルには様々なルールやドレスコードが付きものですが、それらを着こなす上で、まず意識すべきマナーや心得はありますか?

諸田:一般的にフォーマルは、非日常の装いです。その日の気分で自由に楽しむ日常着とは異なり、守るべきルールが付きもの。ただ、ルールはヨーロッパ文化の中で生まれ、伝えられてきたものです。日本では厳格なルールを求められる場面もそう多くありませんし、我々日本人の感覚になじまない部分もあるかと思います。大切なのは、招いていただいた人への敬意と場の空気を心得た装いを優先すること。フォーマルな装いとは、すなわちマナーやエチケットです。ドレスコードだけではなく、このような配慮を心がけた装いこそが、本来のフォーマルのあるべき姿かなと。そういった思いが強くなって40歳を過ぎてから、場面に合わせて、洋装のフォーマルウェアと同じように和装も楽しみたいという思いが湧いてきました。

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ー洋装と和装をフォーマルとして並列で捉えるということですね。まずは、いま着ているタキシードから。どういったケースを想定した装いになりますか?

諸田:ファッション関係者の結婚披露宴を想定したコーディネートです。今はタキシードを選ばれる機会も少なくなったかもしれませんが、ファッション関係者が多く出席する場では、決して“やり過ぎ”には見えないかなと思い、こちらを選びました。私自身も久しぶりに袖を通してみて、伝統的で格式ある衣装というのはトレンドや時代に左右されず、長く愛用できる魅力があり、背筋が伸びて心地よい緊張感を感じられます。こういった場では、コーディネートは基本的にはオーソドックスがいい。フォーマルにおいて自己主張は必要ありませんから。むしろ服で差をつけようという魂胆が目に余るとあさはかだと思われてしまいます。もし服装にちょっとしたアクセントを加えるなら、まわりに分かるか、分からないかの絶妙なさじ加減がポイントです。

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ータキシード以外にも、洋装のワードローブの中でお気に入りのコーディネートは?

諸田:メンズフォーマルの存在や意義を知ってこそ、はじめてあらゆる場面で着用されるお客様へのご提案ができるという思いから、数々の正装をアーカイブしています。英国で紳士淑女の社交場になっている、アスコット競馬場での催しで着用されると言われるモーニングの3ピースもそのひとつ。そこにはグレーで統一した、フェルトハット・ウェストコート・ブレイシーズといったアイテムをコーディネート。そして手にはステッキ代わりにもなる傘を持ちます。持ち手の部分にペンシルを収納できるディテールはとても男心をくすぐられます。生活様式に合わせて生まれたフォーマルウェアの醍醐味が強く感じられる代物です。

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ー和装はなかなかハードルが高いと感じてしまうのですが、洋装と同じように楽しむ方法を教えてください。

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諸田:本来であれば袴を着用することで和装の礼装が格式高い装いになるとされているので、晴れ着という呼び方が相応しいしいかもしれません。鱗柄の着物に、桐、竹、鳳凰を描いた羽織りをタキシードに代わる装いとして提案しています。様々な伝統的な柄(地紋)は縁起や験を担ぎ、柄に想いを込めて着用されたとする吉祥柄です。これらは古くから言いつたえられている日本の生活文化を感じられ、好奇心をくすぐられます。ネクタイを選ぶような感覚で帯を選んだり、合財袋や扇子といった小物で自分流のアレンジもできる。さらに、華奢な体形に合う肩落ちるシルエットは、日本人なら誰もが受け入れやすくて遺伝子レベルで馴染みもいい。最低限の知識があれば、和装ならではの着こなしや色合わせを楽しむことができるのではないでしょうか。

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ー2年前からユナイテッドアローズで着物のオーダーが始まりましたが、店頭での反応はいかがでしょうか?

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諸田:地紋の入った3種類の白生地と、染めは6色から選んでいただき、お客様の体に合わせてお仕立てを承っています。洋装に比べると高額に感じられますが、その細さと魅力を感じられると同時に、和装ならではの体験ができたとお喜びいただき、リピートされる方も増えてきました。さらに、日本独自のデザイン文化である家紋をオーソドックスな刺繍、クリスタルから選べるのはユナイテッドアローズならではのカスタマイズ。9寸11間と呼ばれるサイズの扇子や、紐が通る部分がマンモスの牙で設えた気仙沼の鮫革の合財袋などの小物も豊富に取り揃えています。

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ー和装を着こなすようによって、フォーマルに対する意識で変化したことはありますか?

諸田:以前、職場の後輩の結婚披露宴に招待されたときに、何を着ていこうか迷っていると、その後輩から「諸田さんは着物でしょ!」と冗談まじりに言われたことがあって…。彼を喜ばせたい!という一心で、着物で出席することにしました。彼の記憶にも深く残っているようで、招いていただいた人への礼を尽くすという意味を体験できて、引き出しが増えた気がします。また和装を着用している時は、心にゆとりが持てて、その時間を贅沢と感じられる気がします。礼儀作法を身に付ける機会に恵まれることも多く、それを知ることで“場のため、人のため”に装うという私なりのフォーマルの流儀をさらに深めることができました。解釈を広げると、誰と食事をするか、打ち合せを行う相手との関係など、日常でもTPOを意識したファッション考にもなる。身を纏うものが洋装でも和装でも衣服を通して人間力を鍛える大きな経験にもなると今は感じています。「衣食足りて礼節を知る」という言葉は、まさにこう言ったことだと感じでいます。

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