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  • 付加価値の高い商品を目指して。「ASEAN UA ミーティング」の挑戦。
  • 2019.06.13 THURSDAY

お客さまに、安定してクオリティの高い商品をご提供したい―。そんな思いから始まったユナイテッドアローズ社(UA社)の「QCミーティング」。オリジナル企画商品の生産委託先工場を中心に、主要な取引先企業が一堂に会し、品質の安定化と向上のために情報共有を行うUA社独自の取り組みです。2016年からは、生産拠点のASEAN地域への広がりに伴い、QCミーティングの進化形とも言える「ASEAN UA ミーティング」も新たにスタート。今回はQCミーティングの成り立ちからUA社が目指すものづくりの未来まで、プロジェクトをリードする生産支援部 部長の立川 浩さん、同部技術課の安藤 晃さん、中澤 治さんの三人に話を聞きました。

Photo_Takahiro Michinaka
Text_Risa Shoji

生産拠点が海外にシフトする中、課題となったのは「品質管理」。

「QCミーティング」の”QC”はクオリティ・コントロール、つまり品質管理を意味しています。初めて開催されたのはおよそ10年前、2009年にさかのぼります。QCミーティングの立ち上げを主導し、今も中心となって会を運営する生産支援部の立川さんは、そのきっかけについて「不良品を極力なくし、お客さまにクオリティの高い商品を安定して届けることが目的だった」と説明します。

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「当時はオリジナル企画商品の生産拠点が少しずつ海外(中国)にシフトしていた頃で、製品のクオリティに対する意識の違いもあり、不良品の発生率の高まりが大きな課題となっていました。例えば、縫製がずれている商品やミシンの機械油が付着した商品が頻出していたんです。これは企業の信頼にかかわる事態だ、という危機感がスタートの背景にありました」

まず着手したのは、生産国での検品強化でした。現地工場へ出向き工場さまとの交渉を行い、日本へ輸出する前に専門の事業者による検品(第三者検品)のプロセスを入れ、品質基準を満たすものだけを輸入するしくみを整備します。しかし、不良品を水際で阻止したとしても、製品不良がなくなるわけではありません。不良品の発生そのものを減らすにはどうしたらいいのか。そのためには「やはり現場の意識の改善が不可欠でした」と立川さん。

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「そこで現地の縫製工場や検品会社、輸入元の商社など主要取引先さま12社に集まっていただき、課題の整理や品質向上のための議論を行う会を中国・上海で開催したのです。それがQCミーティングの始まりでした」

ミーティングでは、検品会社に蓄積されたデータをもとに不良品が発生する原因を見定め、改善に向けた提案を行いました。議題は縫製技術のみならず、ミシンのメンテナンスや、工場環境の改善にもおよんだそうです。

「UA社のものづくりに関わる人々が一堂に会し、意見を出し合う場所を設けたことで、顔の見えないやり取りだけでは伝わらない情熱や理念も共有することができたと感じましたね」


さらなる価値創造を求め、ASEAN地域での開催を決定。

以降、QCミーティングは年に一度のペースで行われ、参加企業の数も次第に増えていきました。その後、社会情勢の変化や中国国内の人件費の高騰を受け、生産拠点はベトナムやミャンマーなどのASEAN地域にも拡大。新たな取引先が増えるにつれ「再び品質の維持に課題が生じるようになった」と立川さんは振り返ります。

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「2014年頃からウィメンズのオリジナル企画商品の生産がベトナムに移り、工場ごとに仕上がりのばらつきが目立つにようになってきたんです。製品不良はなくても、縫い方やボタンの付け方のわずかな違いで、仕上がりには差がでるもの。同じ商品で仕上がりに違いがあれば、お客さまの満足度に影響します。そこで、新たに商品グレードの向上を目指す場が必要だと考えたのです」

立川さんたちは、さっそくベトナムでもQCミーティングを開催するため動き出します。一方、QCミーティングは当初「不良品の防止」のために始めた取り組みでした。しかし、これからは一歩進んで、「より付加価値の高いものづくり」を目指したい―。そこで名称を「ASEAN UA ミーティング」と改め、新たなフレームワークとして出発することになったのです。

「まずは2016年5月、ASEANの主力生産国であるベトナムから縫製工場さま5社を招き、ホーチミンで第1回のミーティングを開催しました。初回は工場ごとの課題整理を中心に、ウィメンズジャケットのポケットやボタン付けなど基本的な技術9項目について改善提案を行い、同じ目線でものづくりをするための学び合いの場を意識しました」(立川さん)

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ミーティングでは、縫製とパターンのスペシャリストである技術課の安藤さん、中澤さんが中心となり、プレゼンテーションを行いました。初回のテーマは「いかに立体的に縫うか」。例えばポケットのフラップ(ふた)は、生地同士を平らに縫い合わせてしまうと、横に張り出して見えてしまいます。着たときの全体のフォルムを美しく見せるには、体の曲線に沿うように丸く縫い合わせ、立体に仕上げる技術が欠かせないのです。

「重要なのは、技術の水準を合わせること。どの工場の誰が縫っても同じ仕上がりになることが理想です。そこで日本国内のお取引先工場の協力のもと作成した縫製見本やパターンシーマー(縫製の作業効率が良くかつ安定的に縫い上げるために設計された道具)を見せながら提案を行いました」(安藤さん)

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ASEAN UA ミーティングの開催前後は、ベトナム各地の縫製工場に出向く。工場長や現場リーダーを交え、製造過程の仕上がりを見ながら縫製手順を確認するなど、細やかにコミュニケーションを図る。


言葉の壁があっても、仕上がりの美しさを見れば思いは伝わる。

翌2017年には、1回目のミーティング内容を踏まえ、事前に同じ生地・仕様でウィメンズジャケットのサンプル製作を依頼。ミーティング当日に、実際のサンプルとともに縫製ノウハウやこだわりのポイントなどを各社がプレゼンする機会も設けました。

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「このときのお題は、ピークドラペルジャケットでした。鋭角な下襟(ラペル)が特徴的なデザインですが、この突き出した襟先を左右対称に美しく仕上げるには、高度な縫製技術が必要なんです。ちょっと意地悪なお題でしたが、どの工場さまも試行錯誤を重ね、すごく努力してくださいました。完成したジャケットは期待以上の仕上がりで、私たちも驚きました」(安藤さん)

その背景には「参加工場の皆さんが提案を受け入れ、真摯に改善に取り組んでくださったことがある」と中澤さんは語ります。

「提案に当たっては、必ず相手の意見も聞きながら、対等の立場で議論を重ねるよう心がけています。縫製のプロとしてプライドを持って仕事をしている方々に一方的に接しては、良い関係は築けません。共にものづくりに取り組む仲間として、尊重しあう姿勢を忘れないようにしています」(安藤さん)

2018年には、共通のお題であるジャケットに加え、各社が最も得意とする”渾身の一着”を製作。成果発表のあとには、参加した企業のメンバー同士がサンプルを手に、熱心に情報を交換しあう様子も見られたといいます。3年間、プロジェクトを率いてきた立川さんは「参加者それぞれが惜しみなく技術やノウハウを共有しあうことで、技術力だけでなく、ものづくりに対する意識の底上げにつながった手応えを感じています」と語ります。

「もちろん言葉の壁はありますが、そこは同じものづくりの担い手。サンプルを前に、実際にミシンやアイロンを使って仕上がりを見せれば、言葉以上に伝わることがある。3回の開催を通じて、そう実感しています」(立川さん)

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長年にわたり、品質向上に対する取り組みを続けてきたUA社。その効果は、不良率の改善や売り上げ増など、少しずつ数字にも現れ始めているそうです。しかし、立川さんは「QCミーティングやASEAN UA ミーティングは、数字がゴールではない」と強調します。

「お客さまに、これまで以上に満足していただくこと。商品を手にしたお客さまに、高い付加価値を実感していただくこと。国や言葉の違いを超え、違いに連携しながらそれらを実現することが、私たちものづくり部門の果たすべき使命だと思っています」(立川さん)


激変する市場環境の中で、ともに発展し続けるための機会をつくる。

立川さんは「本来ASEAN UA ミーティングは、第3回で終了するはずだった」と話します。開催が義務化することで内容が薄くなったり、参加企業のモチベーションが下がったりすることを懸念したからです。

「それでも開催を決めたのは、2018年にアパレル市場を席巻した“デジタル化の波”の影響が大きいですね。この1年で、3Dボディスキャンによるバーチャルフィッティングや、採寸データをもとにスマホでオーダー可能なスーツなど、新しいサービスが次々と誕生しています。こうした潮流の中で、ASEANでの生産体制やバリューチェーン全体のあり方、そして向かうべき未来について考える機会が必要ではないだろうか。そう考えたのです」(立川さん)

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今回のミーティングでは、これまでのモノを主軸とした内容に加え、各工場が抱える課題の抽出や市場環境の変化、デジタル技術の活用法などについても話し合ったといいます。

「UA社でも、3Dシミュレーションを使って衣服のサンプルを再現するシステムの導入を検討しています。こうした技術の進化は、生産プロセスの自動化や生産サイクルのスピード化をもたらします。このような激しい変化の中で、UA社のものづくりに関わるすべての人々がこれから10年、100年と発展し続けていくには、今まで以上に緊密な連携と情報共有が必要になるでしょう。今後は、これまで培ってきた技術の継承や人材育成も視野に、ともに成長していく機会としてこの会を続けていけたらと思っています」(立川さん)

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