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  • 新ブランド〈フィータ〉のディレクター神出奈央子が挑む新たな取り組み。
  • 2019.01.24 THURSDAY

この春デビューする新ブランド〈フィータ〉は、世界中の優れた服飾技術や文化を継承し、時を経ても愛される“繋(つな)ぐ服”がテーマ。過剰な在庫を持たないように受注生産という形をとっているのも特徴的です。こちらを手がけるのはこれまで別のブランドでクリエイティブディレクターを務めてきた神出奈央子さん。長く作り手として手腕を発揮してきた彼女が語る、新しい試みに対する思いとは?

Photo : Kazumasa Takeuchi(STUH)
Text : Kumiko Nozaki

想いを技術を、「繋ぐ」物作りが理想。

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─フィータを立ち上げたきっかけを教えてください。

神出:ずっと関わってきたブランドが2017年に休止すると決まったとき、ブランドを長く続けるには何が必要なのか考え、自分で企画書を作成しました。どんなブランドにすべきかと考えたときに、この時代にせっかくゼロからスタートするのであれば、今、感じているファッション業界の課題解決に少しでも繋がるような内容にしたいなと。

─危惧されていたのは具体的にどんなことでしょうか?

神出:大量生産による過剰在庫や、洋服が年々スピーディに消費されていくことです。一方前のブランドがなくなると決まったとき、最後にお店にいらしたお客様が「これからもずっと大切に着ます」と言ってくださったことは、ブランド自体はなくなっても思いを込めた洋服はしっかり残るということを、私に再確認させてくれた印象的で嬉しい出来事でした。

─過剰な在庫は持たない、長く着られることを前提としたブランドになったのは、そのような経緯があってこそなんですね。コンセプトである「繋ぐ服」という言葉に、神出さんの思いを強く感じます。

神出:そうですね。コンセプトには長く大切に着てもらいたいお洋服を次の世代に繋ぐ、確かな服飾技術や文化をまだ知られていない場所へと繋ぐなど、いろんな意味の「繋ぐ」を込めています。またそれに沿うように、破損部分のリペアや汚れや変色による染め直しなど、時間を経ても変わらず愛用できるようなアフターケアサービスも設けています。着るほどにどんどん味わいも魅力も増していく、デニムやレザーのような存在になれたら嬉しいですね。

UA_Pheeta_0135リバーレースやハンドピンタックを用いた、手仕事ならではの温かな美しさが光る。

UA_Pheeta_0154ハンドのピンタックを用いたシャツシリーズは、メンズでも展開(メンズはユナイテッドアローズ別注のみ)。


本質を大切にする人に着て欲しい服。

─ご自身が「繋ぐ」ように大切にしているアイテムはありますか?

神出:祖父にもらった時計からヴィンテージショップで買った100年前の服まで、ひとつに絞れないぐらい、とてもたくさんあります。昔からひとつのものを大事にする習慣が身についていて、長く使うためにビフォーケアをしたり洗濯方法にこだわったりも。自分で時を刻み、思い出を重ねていったアイテムは愛着もひとしおです。

─神出さんの物に対する向き合い方がコンセプトにしっかりリンクしていますね。
 ではフィータはどんな女性に着て欲しいと思いますか?

神出:母から娘へ引き継いでいただけるような洋服作りを目指しているので、年代や女性像など明確なターゲットは設けていません。女性は年齢による体型の変化もあるため、そこは念頭に置いてシルエットやデザインを考えるようにしています。ただひとつだけ挙げるとしたら、本質を大切にする方に着ていただきたいです。私自身、現代社会で生活する中で、その忙しさから自分自身が消費されてしまったり、擦り減ってしまっているなと感じることがしばしばあります。そういったときにフィータの物作りを通じて、本質を大切にする価値観に触れ、自身が消費されないような生き方をしたいなと改めて気づかされる瞬間があります。お客様にとってもフィータの洋服を纏われた際、自身の生き方と向き合うようなきっかけになるものがあればと願っています。

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熟練した職人技と崇高美に惚れたリバーレース。

─世界中の優れた工場や職人と協業するというのは、フィータのひとつの特徴ですよね。

神出:前職時代、様々な国の工場に出向き、多様な技術を目にする機会が多かったんです。手仕事や職人技術でしか生み出せない、あたたかみや美しさに当時からとても心を動かされていたので、いつか別な形で取り組めないかと思っていました。

─ファーストコレクションはインドのリバーレースを題材にしていますね。

神出:今まで行った中で、とても印象に残っていたのがリバーレースの工場でした。19世紀初頭に開発された古い織機のため1日20mしか編むことができません。現在は主にウエディングやオートクチュールに使われるような、格式高いレースです。手間と時間をかけてレースが生まれるプロフェッショナルな光景と、手仕事ゆえの美しい仕上がりがとても記憶に残っていて、今回、ぜひこの工場や職人の方たちと協業しようと決めました。

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─実際にインドの工場に行ってみていかがでしたか?

神出:何度か行っている場所でしたが、今までで一番、現地の職人の方としっかり向き合った気がします。洋服の細かな仕様から仕上げの方法まで、ああすべきじゃないか、いやこうじゃないかと意見を交換しながら密にコミュニケーションを重ねていったのは、前職のときにはできなかった貴重な経験でした。

─今回のコレクションではリバーレースを重ね、ファーのようにボリュームを出したジャケットなど、レースのイメージを覆すアイテムがとてもユニークでした。

神出:あのジャケットは実はレースを600mほど使っているんですよ。あくまで技術ありきのブランドなので、作成できるアイテムの幅は少々狭いかもしれませんが「デザインと技術の組み合わせ次第でこんなアイテムもできるんだ!」というところを、これからもっと多くの方に見て欲しいですね。

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─最後に神出さんの今後の展望を教えてください。

神出:世界にはまだまだ受け継がれるべき、素晴らしい技術がたくさん残っています。そういった職人の方や工場と繋がり、継承していくことでより価値のあるアイテムを増やしていくのが目標です。またせっかく頑張って作ってもらったものを余らせたり、安価に売ったりせず、誰にとってもフェアなブランドでありたいと思っています。

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