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  • どこにでもあるシャツじゃない。
    「EASY CARE」で知ってほしいユナイテッドアローズの品質。
  • 2019.01.17 THURSDAY

昨年〈ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)〉から誕生した「EASY CARE」のシャツは、アイロンがけをせずともシワが目立たない、文字通り“ケアがラク”なアイテム。でもそうした機能的なシャツは、昨今では当たり前になっています。ユナイテッドアローズがこだわったのは、豊かな風合いをキープした“ドレスシャツとしてのクオリティ”でした。一体、「EASY CARE」のシャツにはどんな秘密があるのか? 鹿児島にある工場で商品ができるまでを追いかけました。

Photo:Go Tanabe
Text:Masaki Hirano

いつものシャツと変わらない風合いでシワをつきにくく。

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洗濯後の服のケアに関して、みなさんはどんなお手入れをしているでしょうか。普段からスーツを着る人であれば、“シャツのアイロンがけ”は避けて通れない道。とはいえ、その関門を簡単にパスすることができたら、大きな肩の荷がスッとおりた感覚を味わえるはずです。

昨年、〈ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)〉から発売された「EASY CARE」のシャツは、アイロンをかけなくてもシワが目立ちにくいという特徴を持ったアイテム。こうした機能的なシャツの多くは化学繊維が用いられることが多いのが実状ですが、〈ユナイテッドアローズ〉の「EASY CARE」シリーズはコットン100%の生地を使用。これまでのシャツと同じである100番手の細い糸で織り上げた生地を使い、普段着ているシャツと何も変わらない風合いを維持しています。

しかも、生地だけではなくて縫製と洗濯によるシワもでないように配慮しているところもポイント。縫製部分にはテープを挟み込みながら生地を縫うことで、縫糸と生地の縮率の違いによるパッカリングを防止しているのです。

今回はこのシャツの開発を担当した山喜(株)法戸真一さんに、アイテムの誕生秘話を語っていただきました。

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形態安定の秘訣は、縫製とベーキング処理にあり。

─「ユナイテッドアローズ」の「EASY CARE」シリーズで使用している生地について教えてください。

法戸:100番手双糸で織られた生地を使用しています。この生地にはあらかじめ「SSP(スーパーソフトピーチフェイズ)」という加工が施されていて、これがシワの防止につながるわけです。ただ、この生地を使ってシャツの形にすればいいというわけではなく、最後に“ベーキング”と呼ばれる熱処理を加えることで、シャツに染み込んだ溶剤を定着させる必要があります。

─ベーキングをすることでようやく形態安定するということですか?

法戸:そうですね。この生地には加工期限があって、入荷から一定の期間内に熱処理を加えないと効果が失われてしまいます。ですので、使用期限内に生地をパーツごとに切って、縫製して、シワを伸ばして、最後にベーキング用の機械で熱処理を加えてSSPの加工を定着させるわけです。

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裁断された生地はシワがつかないようにパーツごとにきれいに積み重ねられ次の工程へと送られる。

─昔からこのやり方でやられてきたんですか?

法戸:うちはもう25年ほどになります。初期の設備投資に資金が必要なので、他の工場ではなかなか浸透しなかったのが実状です。よくある形態安定のシャツというのは生地工場で生地に形態安定をかけたものがほとんどです。

─シャツになった状態で加工を定着させることが重要であると。

法戸:生地と縫製に使用する糸では水にさらしたときの縮率が変わるので、パッカリングという現象が起こってしまうんです。

─ジーンズの縫製部分が波打ったようになるのと同じですね。

法戸:それを防止するために「EASY CARE」では、“テープ縫製”と呼ばれる特殊な縫い方をしているんです。パーツをつなぎ合わせる際に、樹脂がついた細いテープを一緒に縫いこんで、それをプレス機で圧着させています。とくに衿周りと脇、アームホールは曲線のパターンが引かれているので、専用のプレス機が必要なんです。「山喜」では〈ユナイテッドアローズ〉型紙に応じたプレス機を用いて、より精度の高いシャツを量産できる仕組みをつくっています。

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テープ縫製には熟練の技術が必要となる。写真上に見える半透明のテープが、パッカリングを防ぐ秘訣となる。

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曲線を描く袖周りをプレスするための専用機械。一枚一枚、気を使いながらシャツをセット。縫い目に合わせてプレスしていく。

─1日に何枚くらいのシャツが生産できるんですか?

法戸:いまの設備だと200枚/日前後でしょうか。専用設備が増設できれば、量も増えると思うんですが、仮にそうなったとしても、テープ縫製ができる人材がいないことには話になりません。縫製ひとつにしても細かな技術が必要なので、入っていきなりそれができるわけではないんです。日本の工場でこれができるところはほとんどないと思います。

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守りたかったユナイテッドアローズのこだわり。

─「EASY CARE」が生まれた過程を教えてください。

法戸:〈ユナイテッドアローズ〉がやりたいこと、そしてうちができることをお互いキャッチボールをしながら作業が進んでいきました。そもそもこういった形態安定のシャツはいまの時代珍しいものではない。だから普通のことをやってはダメだというのは念頭にあったんです。そこでまずは細番手の天然繊維にこだわるという部分からスタートしました。

〈ユナイテッドアローズ〉の通常のラインナップのシャツは、100番手の双糸を使うというのが基本です。もちろん他にもグレードはありますが、ベースは細い100番手ということで、そのクオリティーを担保しながら「EASY CARE」をつくりたいということでした。

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縫製が終わったシャツに熱を加えて、生地に含まれる溶剤を定着させるベーキング加工。〈ユナイテッドアローズ〉のシャツの場合は、153℃で6分間の工程となる。

─一般的な形態安定のシャツには使われないんですか?

法戸:一般的には50番とか40番くらいの太い糸が主流です。それぐらいがやはり強度があってシワもつきにくくなるんですが、そこに加工が組み合わさると、どうしてもゴワついた風合いになってしまうんです。

─つまり柔らかくてドレッシーな風合いを出したかったと。

法戸:糸が細くなればなるほど柔らかくなりますし、そうなると強度が弱くなってしまう。〈ユナイテッドアローズ〉がこだわる風合いと、形態安定の度合いをどれだけ上手にバランスを調整するかというのが難しかったですね。素材メーカーにも加工のレシピを作り直してもらいながら、ようやくできた生地なんです。

─先ほど縫製にも細かな技術が必要と仰っていましたが、縫製面で大変だったことはあるんですか?

法戸:立体的なところは縫いにくい箇所もあるんですが、できなくはないというレベルですね。当然手間がかかるし、生産性もよくないんですが、それをやらなければクオリティを守ることができない。我々としても質の悪いものは世に出したくないですから(笑)。

─生地の加工、縫製技術、そして設備。これが三位一体になってできているシャツなんですね。

法戸:そうですね。いいものといいものを掛け算して、より完成度を高くしたシャツというところでしょうか。

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目指すのは本来のシャツと遜色ない風合い。

─発売スタートから約一年が経過していますが、お客さまの反応を耳にする機会はありましたか?

法戸:すごく好評だと聞いて、我々も喜んでいます。昨年の春には売り上げランクの上位のほうへ食い込んだそうなんです。お客さまにはもちろんなんですが、ケアがラクで、なおかつ風合いもいいということで、スタッフの方々からの反響も多いのが要因なのではないかと思ってます。

─〈ユナイテッドアローズ〉の品質が活きている証拠ですね。

法戸:やはり普通の綿100パーセントのシャツは、午前はいいですが午後になるともうシワシワになってしまいます。でも、私自身もこのシャツを着ていて思うのは、午後もシワがつかないまま仕事ができるということなんです。それって、ある意味ではおしゃれをキープしているということなんですよね。そして適度にふわっとした風合いもあって、すごくいいですよ。こうした機能的なシャツは安物というイメージがつきまとっていましたが、そうじゃないものができたという実感があります。

─今後、この「EASY CARE」のシリーズで考えている新しい展開などはあるんですか?

法戸:やはり素材のクオリティを上げることと、テープ縫製でドレスシャツにあるような難易度の高い方法にもチャレンジしていきたいと思ってます。それをすることによって、より本来のシャツに近い風合いや品質をお客さまに楽しんでいただけるようにしていきたいですね。

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