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  • ウツワ UTSUWA
  • 産婦人科医の宋先生に聞く、自らの身体との向き合い方。
  • 2018.10.09 TUESDAY

日々、女性患者を診療しながら、女性のヘルスケアについての講演も行う宋美玄(ソン・ミヒョン)先生。あまりにも多くの情報があふれる現代において、女性が陥りがちなことについて教えてもらいました。健康に、楽しく、働くためには、私たちはどのような意識で、自分の身体に向き合うことが大切なのでしょうか。

Photo:Takahiro Michinaka
Text:Noriko Ohba

かたよった情報で自己診断することは危険!

情報があふれる現代、特に女性の健康にまつわる情報は関心度も高く、雑誌やテレビで特集が組まれることも多くあります。そういった情報の扱い方には、注意が必要だという宋先生。

「女性ホルモンは、思春期から30代まではあまり大きな変化はないのですが、私のところには『先生、最近体調が悪いのですが、私プチ更年期でしょうか…』とやってくる30代半ばや後半の女性も多くいらっしゃいます」。診断して違うと伝えてもなかなか信じてもらえず、実際に女性ホルモン値を調べて、やっと納得される患者さんも多いのだとか。

「雑誌やネットの影響もあると思うんですよね。“プチ更年期が〜”という記事を読んで、それをかたくなに信じてやってくる。これは何も更年期に限った話ではありません。現代は、あまりにもいろいろな情報が飛び交っていて、読んだ方は自己診断して、「私はこれだ」と思い込んでしまう。病院で本人の見解と違う診断をしても、なかなか信じてもらえない。雑誌やネットに載っているものと医師の診断と、情報の重さが同じように扱われることもあります。

自分の身体に意識を向けることはとても大切なことなのですが、偏った情報を信じ込みすぎたり、遺伝や体質といった自分の手ではどうにもならないこともあるなか、自分の身体は自分ですべてコントロールできると考えたりするのは危険だと感じます。身体には個人差がありますので、多くの人に向けた情報が必ずしも自分に当てはまるとは限りません」。


女性は健康系自己啓発が好き?

先生が特に警鐘を鳴らすのは「これをすればあなたの人生が劇的に変わる!恋愛も仕事もオールOK!」というような健康系自己啓発を好む傾向。

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こういった情報は『言われれば私も当てはまるような…』と思えるので、書いてあることのすべてを鵜呑みにして信じ込んでしまう方もいます。実際におすすめしているやり方を見ていると、医師の私からすると危ない、やめて、という健康法もあります。私も患者さんが効果のないことや間違った方法を行っていたら指摘します。

ただ、なかにはその情報を信じることで日々を生き生きと過ごしている方もいるので、身体に害を及ばさない限りそういった患者さんには、私も真っ向から否定はしません。もしも自分が自己啓発系の健康情報に飛びつきがちだと感じる方は、『どうして私はこの手の情報が好きなんだろう』と、自身について振り返って考えてみるのもいいかもしれませんね」。

現代は、不安になるような情報を積極的に摂取して常に心配を抱えている女性もいれば、逆にあまりにも自分の年齢や身体について楽観的に捉えている女性もいて、極端さが目立つと先生。

「出産に関しては、実際に37、38歳ごろから妊娠しにくくなりますが、これについても『でも芸能人のあの人は45歳で妊娠しましたよね』などと、レアケースを持ち出して自分も大丈夫だと思っている方もいます。ネガティブにしろ、ポジティブにしろ、身体についての思い込みはできるだけ減らし、偏った情報だけを信じずに、自分の身体に何か異変を感じたら医師に相談してください」。

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なぜか、女性全体の意識が低い“あること”。

日々更新されていく多くの情報を取り込み、女性ホルモンや女性の身体についてさまざまな知識をもつ女性が増えるなか、先生はあることについてだけは問題視する女性が少なく、とても不思議だと言います。あることとは…?

「月経です。私は自分のクリニックがある丸の内の周辺企業の方に、女性の健康について講演する機会もあるのですが、これだけグローバルな感覚をもつ彼女たちでも、なぜか月経に関しては10年、20年も同じ意識のまま、何も更新されていないんです。痛みを抱えながらその時期を過ごすことを当たり前の苦痛だと思って、受け止めているんですよね。

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『私、生理痛がすごい重いんですよね』『私って2か月に1度しか生理がこない人なんです』など、それが問題だということに気づいていない方が本当に多いです。これは教育の背景もあるのかもしれません。母の代から生理痛“くらい”で痛み止めを飲んじゃだめ、と言われたり、その時期に身体を休めることが悪いことのように感じたり、その話をすること自体がタブー視されてきたのが現状です。痛みがあっても『こんなもんだ』『仕方ない』と受け止めて我慢すること、病院に行ったり改善方法を探ることをしないことは、美学でも何でもなく、危険なこと。身体に問題を抱えているかもしれないのです。

生理の痛みは当たり前ではなく、子宮内膜症や子宮内膜ポリープ、子宮筋腫など病気のサインである可能性も大。病気ではなく、ホルモンの働きによって痛みが起こる『機能性月経困難症』の可能性もありますが、いずれにしても痛みがあるのなら、それは治療対象になります。毎月やってくる痛みだからといって軽く捉えず、ぜひ病院に行ってください。

排卵とは卵巣の壁を破って出てくる卵子が生まれることの繰り返しであり、生理とは子宮内膜が増殖して、はがれ落ちることの繰り返し。このような創造と破壊の繰り返しは、女性の身体に大きな負担をかけており、また、ガン化のリスクも増えてしまいます。今妊娠を望んでいないのなら、生理を起こさないという選択もアリ。私はピルの機能をもつ埋め込み型避妊具「ミレーナ」を使用してもう何年も生理はありません。たかが生理痛と思わずに、身体に負担をかけず、快適に暮らせる方法を探してください。

生理についてもっと意識的であってほしいのと同時に、子宮がん検診への習慣も定着してほしいですね。乳がん検診を啓発する『ピンクリボンキャンペーン』のように、世界中で行われ、女性たちの意識を向ける試みはとてもいいと思います。子宮がん検診は、性交渉をもった年齢から2年に1回受けてほしい検診。子宮がんは、病気が進んでから症状が出るものなので、病気の発見が早期にできるよう、遅くならないためにも検診を習慣にしてください。

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