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  • パラブーツ、ものづくりの拠点をたずねて。
  • 2018.10.11 THURSDAY

創業から100年余り、メイド・イン・フランスのシューズとして世界中から愛される〈パラブーツ〉。その一足が生まれるのは、アルプスの麓にあるフランス南東の地方都市、グルノーブルにあるファクトリーです。創業から現在まで変わらず、山間の小さな町を拠点とする同ブランド。長い歴史に裏付けられた質実剛健なものづくりの現場をお届けします。

Photo : Shunya Arai
Text : Mami Okamoto

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フランスが誇る〈パラブーツ〉のルーツと歴史をたどる。

ユナイテッドアローズでも別注モデルを含め多数のラインナップを展開している〈パラブーツ〉が誕生したのは1908年。創業者であるレミー・リシャールポンヴェール氏は、貧しい農家出身。靴職人として働いていましたが、自らパリの上流階級に売り込み靴製造事業を始めます。その後、山岳労働者向けのシューズを積極的に開発し、登山靴のリーディングカンパニーとして成長していきました。100年以上続くフランスの老舗〈パラブーツ〉のルーツとDNAを探るため、アルプスの大自然に囲まれた拠点を、マーケティングディレクターのエルヴェ・サポリスさんに案内していただきました。

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グルノーブルからさらに車を走らせた小さな町、サン・ジャン・ド・モワラン。アルプスの山々を臨む開放的なロケーションに〈パラブーツ〉の拠点があります。ここには、すべての工程をまかなうファクトリー、本社、ショールームを併設。貴重なアーカイブを保管している倉庫もあります。ここで働く人々は150人ほど。勤続45年という職人、二代に渡り働く親子も多くいるそうで、地域に根ざしたものづくりをしていることがわかります。

_DSC3708_DSC3704_DSC3716_DSC36722017年1月に完成した本社のアーカイブ資料室には、貴重なシューズや写真の数々が展示されている。創業当時の本社の写真(上)や当時の職人たち、また、1930年代からの貴重なアーカイブがずらりと並ぶ。登山靴からデッキシューズまで、現在の〈パラブーツ〉の原点ともいえるラインナップだが、創業者であるレミー・リシャール氏が製作した1930年代のゴム製オールインワン(下)は特に興味深いプロダクトだ。

世界で唯一、自社生産するラバーソール。

〈パラブーツ〉といえば、独自のラバーソール。ラバーソールを自社生産しているのは世界で〈パラブーツ〉だけです。そのルーツは、1920年代に先代が旅先のアメリカで出会ったラバーブーツから着想を得て、同社でのラバーソールづくりをスタートさせたことから始まります。木製や革製のソールが主流だった当時から90年以上の歴史を持つ自社製のラバーソールは、現在も同じファクトリーで作られています。モデルに合わせて製造工程が微妙に異なるラバーソールは18種類ほど。ソールの原型となるエボッシュを作るため、原材料であるラテックスを加工し、棒状になったラバーをひとつひとつ手作業で切っていきます。そして、オリジナルのソール“パラテックス”の金型にラバーを置き、熱と圧力を加えてソールの形状にしていきます。はみ出た部分は専用の機械で丁寧に切り取り完成。これが〈パラブーツ〉の原点ともいえる大切な工程です。

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ノルヴェイジャンウェルト製法のパイオニア

独自のラバーソール同様、〈パラブーツ〉を語るうえで欠かせないのが、ノルヴェイジャンウェルト製法です。その名のとおり、ノルウェーなどの寒冷地でも履けるように開発されたもので、最大の特徴は、防寒性と耐水性を兼ね備えたタフな仕上がり。堅牢性と安定感があることから登山靴、スキー靴やミリタリーシューズなどに多く用いられています。また、最近ではグッドイヤーウェルト製法のドレスシューズを展開することも多くなっているそうで、このグッドイヤーウェルト製法は、ノルヴェイジャンウェルト製法よりも洗練された見た目でありながら、手縫いシューズの利点をマシンメイドで実現することができるというメリットもあります。伝統を重んじながら、新しい技術も取り入れ、マシンとハンドをバランスよく駆使するのが〈パラブーツ〉の靴作りの哲学といえます。

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ハイクオリティな国産レザーへのこだわり。

国産のレザーにこだわり続けることも〈パラブーツ〉ならではの特徴。現在は、レザーの確保がかなり難しく、7~8割はフランスの名門タンナーから、残りはヨーロッパ各国から仕入れたものですが、すべてオーガニックのレザーを使用しているそうです。「長く使用することができる素材がなければ〈パラブーツ〉ではない」。誇りを持って上質な素材をセレクトしているのがわかります。ラバーソール、製法、レザーの品質。すべてにこだわり抜いた、メイド・イン・フランスであることが〈パラブーツ〉の大きな魅力。ラグジュアリーとは異なる、あくまでも質実剛健なプロダクトとして、世界中から愛されているのです。

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小さなアトリエから、大きなファクトリーへ。

ファクトリー見学のあと、今回の案内人であるサポリスさんにお話をうかがいました。今回紹介したファクトリーは、2017年1月に完成。これまでは、各工程ごとに小さなアトリエで作業を進めていたそうですが、昨年、すべての工程をまかなうことができる工場として生まれ変わりました。長年働く職人たちは、大きくなった工場とそのシステムに最初は戸惑うことも多かったそうです。「小さな村の小さなアトリエでしたからね。アルティザンたちはこれまで休憩や食事をしに自宅に帰ったりしていて、本当にこぢんまりと仕事をしていたんですよ。だから、手作業をする職人たちのすぐ隣で、マシンが稼働しているというのに最初は違和感がありました。大きなファクトリーになり、環境が変わったことはかなり大きかったんです」。とはいえ、工程全体を把握しやすくなったこと、生産管理やストック管理が一括できるようになったことなど、もちろんメリットも多く、量産の体制も整ったといいます。「体制は整いましたが、スピードはあまり変わっていないんですよ。同じ場所で作るようにはなったんですが、手作業と機械のバランスも変わっていませんし、もちろんクオリティは保っています」

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パラブーツが、ものづくりで大切にしていること。

「ほとんどの職人が若いときからここで働き、ここでテクニックを一から学んできました。それを継続、継承していくことが〈パラブーツ〉のものづくりの根幹にあります」。〈パラブーツ〉のものづくりをひとことで例えると「手作業とテクノロジーのマリアージュ」だとサポリスさんは言います。その言葉のとおり〈パラブーツ〉の魅力は、マシンメイドとハンドメイドのバランスを保ちつつ、頑丈で履きやすいプロダクトを展開することにあります。また、メイド・イン・フランスということに誇りを持っていることも、ファクトリーを見学し、サポリスさんからお話をうかがうことでわかってきました。「フランスでものづくりをすることは簡単ではありません。すべてのパートが大切ですが、特に自社のソールは〈パラブーツ〉における財産ですから、大変ですがこれからも続けていきます。そもそも、伝統だけでは滅びてしまうという考えから、ラバーソール作りが始まりました。このソール作りを止めたら、取引先からも必要とされなくなってしまうかもしれませんしね。伝統と革新、そしてそれを継承していくこと。そのバランスが大切なんです」。そんなブランド哲学から生み出されるシューズに世界中の人が魅了され、今や取引は世界30カ国に及ぶのだそう。「様々な国と取引をしていますが、特に日本のマーケットはおもしろいと思いますね。伝統的なものを大切にしながら、新しいものを生み出していくという考え方が根付いていて、そのバランスが〈パラブーツ〉の価値観にとてもマッチしています。料理もそうですが、フランス人と日本人はものづくりに対する気質が似ていると感じますね」


UAバイヤーたちが考えるパラブーツの魅力とは?

ここで一旦、目線をユナイテッドアローズ内部に向けてみましょう。今シーズンは、各ブランドがそれぞれで〈パラブーツ〉との別注アイテムを作っています。〈ユナイテッドアローズ〉、〈ビューティ&ユース〉、〈グリーンレーベル リラクシング〉、それぞれのバイヤーたちは、〈パラブーツ〉に対して、どんな思いを持っているのでしょうか? その魅力について伺いました。

ユナイテッドアローズ
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「ドレスとカジュアル両方の顔を持っているところがいちばんの魅力だと思います。ドレススタイルではかしこまった印象を和らげ、カジュアルスタイルでは上品さをプラスしてくれる。この別注ビットローファーが好例ですね」

ビューティ&ユース
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「「〈ビューティ&ユース〉では、ウィメンズモデルで展開する紐タッセルをメンズでも使用。アッパーもガラスレザーに変更しインソール、ステッチもブラックに統一しモード感のあるシャンボードに仕上げています。」

グリーンレーベル リラクシング
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「〈パラブーツ〉と言えば、堅牢で優雅な印象。〈グリーンレーベル リラクシング〉では、少しいなたい印象の「ミカエル」のアッパーをリスレザーからドレスラインで使用しているシボ革にしたモデルを展開しています。底付けをグッドイヤー製法にすることで、さらに品な表情に仕上げました」


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ユナイテッドアローズとパラブーツとの関係

フランス人と日本人は似ているという、サポリスさんの言葉どおり、日本でも〈パラブーツ〉は普遍的な人気を誇り、男女問わず幅広い世代から支持されています。ユナイテッドアローズの各ブランドともコラボレーションし、ほかでは手に入らないオリジナルモデルを展開しています。「ユナイテッドアローズさんとは、スペシャルなモデルも多数展開しています。5年前くらいから、よりオープンな関係になったという印象がありますね。新しいアイディアを提案してくれるから、プロジェクトを進めていくうえでとても楽しいパートナーです」。今後もフランスを代表するシューズメーカーとして長い歴史を刻んでいくであろう〈パラブーツ〉。最後にサポリスさんは冗談交じりにこう締めくくった。「私はもうこの世にいないと思いますのでわかりませんが(笑)。数十年後もブランドは継続されていくでしょう。ルーツを大切に進化を続けること、時代とともに新しいことに挑戦しながら続けていくことが大切だと思っています」

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