JP

  • モノ MONO
  • 誰もが“着ること”を楽しめる社会へ。「041」の新たな挑戦が始まります。
  • 2018.04.12 THURSDAY

2018年4月、新しいレーベルがスタートします。その名は〈UNITED CREATIONS 041 with UNITED ARROWS LTD.(ユナイテッド クリエイションズ オーフォアワン ウィズ ユナイテッドアローズ)〉(以下、UNITED CREATIONS)。「041」は「ALL FOR ONE」を意味する、ひとりを起点にプロダクト・サービスを開発するプロジェクト。その041とユナイテッドアローズ社がタッグを組みました。スタートした背景には、先天的・後天的な障がいのために、これまで“おしゃれ”の選択肢が非常に少なかった人々の存在があります。障がいの有無を問わず、おしゃれを楽しみたいすべての人に洋服を届けるには、どうすればいいか——? そんな問いから始まった〈UNITED CREATIONS〉のストーリーを、制作者たちの思いとともにお届けします。

Photo:Takeshi Wakabayashi
Text:Risa Shoji

ひとりのニーズに深く向き合うことで生まれた、新しい衣服。

例えば、仕事で大事なプレゼンを控えた日。恋人とのディナーの日。そして気のおけない友人たちとの週末旅行。さまざまな日常のシーンの中で、私たちは「何を着よう?」と服を選び、ファッションを楽しんでいます。装うことで心がワクワクしたり、ポジティブな気持ちになれる。そんな経験は、きっと誰にでもあるはずです。

しかし、世の中には、病気や障がいによって、気軽におしゃれを楽しめない人々もいます。手の筋力が弱く、ボタンを留められない。四肢を自由に動かせず、着脱の難しい服を着ることができない。気管切開をしているため、首元のおしゃれができない……。彼らがどんなに「おしゃれを楽しみたい」と思っても、既存の製品ではかなわない現実があるのです。

障がい者のために作られた衣類について、今回ニーズを聞かせていただいたおひとりは、「体の状態を考慮して作られているため、着脱のしやすさなど機能面は充実していますが、おしゃれをしたい気持ちが満たされるものはなかなか見つからない」と言います。彼らがおしゃれを楽しむには、不便な箇所が多い既製品をそのまま着るか、自分に合った形にカスタマイズして着るしかありません。

2_18.3.21_17325

〈UNITED CREATIONS〉では、確かに存在する“ひとり”を起点にデザインする、という新たな試みに挑戦しています。ただし、それは「オーダーメイドの一点物」を作ることが目的ではありません。ひとりのニーズに深く向き合うことで、より多くの人々に喜ばれる新しい衣服を生み出すチャレンジなのです。

3_18.2.5_12658

4_18.2.5_12646

〈UNITED CREATIONS〉プロジェクトの制作チームは、ユナイテッドアローズ社内で自ら名乗りをあげた有志によって結成されました。そして2017年秋、それぞれ異なる障がいを持つ5名の方にご協力いただき、詳細なヒアリングを実施。そこで得たさまざまなニーズを基に、プロトタイプ制作がスタートしました。


スムーズな着脱を実現したリアルレザーのライダースジャケット。

5_18.3.21_172936_18.3.21_173077_18.3.21_17310

このライダースジャケットは、脊髄性筋萎縮症で顔と左手親指以外を動かせないあそどっぐさんのために作られました。すっきりしたシルエットと、表面に採用した美しい光沢のリアルレザーが、高いファッション性を実現しています。

制作チームのひとりで、ジャケットのデザインを担当したユナイテッドアローズメンズチーフデザイナーの小山雅人は、本革を選んだ理由をこう説明しています。「着やすさだけを考えると、伸縮しにくい本革を使うことには迷いもありました。でも『今まで本物のレザーを着たことがない』『障がいがあってもカッコいいジャケットを着てみたい』というご本人の思いを、何よりも叶えたいと思ったんです」

リアルレザーの質感にこだわる一方、着替えには常にヘルパーさんの介助が必要となる事情を考えて、背面や脇、袖の内側には伸縮性のある生地を使用。さらに両脇下にファスナーを付けることで、寝たきりの状態でもスムーズに着脱できる工夫を凝らしています。

「実際の着やすさ・着心地については、技術担当のメンバーがたくさんアイディアを出してくれました。このファスナーも、アウトドアジャケットに用いるベンチレーション(ウェア内にこもった熱を排出するための機能)から着想しています。チームのみんながひとりのニーズにとことんコミットしたからこそ、これまでにないライダースジャケットを提案できたと思っています」(小山)


車いすでの生活スタイルに合わせたパンツ。

8_18.3.21_172909_18.3.21_1731510_18.3.21_17312

こちらのパンツにも、制作チームの高い技術が活かされています。難治性てんかんによる四肢機能障害を抱える菊池 亮さんのニーズで誕生したこのパンツには、なんと後中心の縫い目がありません。

「寝たきりの人々にとっては、衣服の縫い目さえ床ずれの一因になってしまいます。また、おむつ着用時を考えると、ヒップ部分には一定のボリュームも必要です。それらのポイントをクリアしつつも、健常者が穿いてもきれいなシルエットを作るには、パターンメーキングにかなり工夫が必要でした」(小山)

車いすでの生活スタイルに合わせて、座った姿勢でのシルエットや利便性も追求しています。座位のときに最もきれいなシルエットが出るよう、裾をやや前下がりにしているほか、ポケットも座ったときに使いやすい脇ポケットを採用しています。

「座った状態では、ポケットからモノが取り出しにくかったり中身が落ちたりすることがあります。そこで脇線を前にずらし、ポケットに入れたモノが下側に落ちるよう袋布を取り付け、車いすユーザーでも使いやすい形にしました」(小山)


思わず使いたくなるような、かわいいスタイ。

一方、着たい服が着られない悩みは、大人だけのものではありません。障がいを持つ子どもたちもまた、日々のファッションには苦労しています。先天性筋ジストロフィーという難病を抱える加藤真心ちゃんは、口まわりの筋肉がゆるいため、小学生となった今もスタイが欠かせないと言います。しかし、市販のスタイはデザインも大きさもベビー向けのものしかなく、お母さんは常々「8歳の女の子でも使いやすいスタイがあればいいのに」と感じていたそうです。

11_18.3.21_1730012_18.3.21_1730213_18.3.21_17305

そんなニーズを基に誕生したのが、こちらのスタイにもなるエプロンドレスです。制作を担当したのは、ユナイテッドアローズウィメンズ彩貨デザイナーの稲沢日南子。ふだんは大人の女性向けにファッション雑貨のデザインを担当しており、子供服のデザインは今回が初めて。そんな彼女は「必要だから付けるのではなく、思わず使いたくなるかわいいスタイを作りたかった」と、開発の経緯を振り返ります。

「ワンピース型にしたのは、お腹までしっかりカバーでき、裾で口もとを拭くこともできる十分な丈の長さを確保しながら、ファッションとしても楽しめるデザインにしたかったからです。ベビー用のスタイにはない、お姉さんらしさを大切にしました」

製品の上部表側・下部裏側には吸水性・速乾性の高い生地を採用。胸元には裏地を付けて衣服への水分の浸透を防ぐなど、スタイ本来の機能にも配慮しています。一方、裏地については「ご家族から予想外のうれしいフィードバックがあった」そうです。

「口元を拭く際、ワンピース型だとスカートを捲り上げているように見えてしまうんです。でも、このスタイにはしっかり裏地が付いているので、中に着た衣服が丸見えにならない。『年頃の女の子なので、そういう点にも配慮があってうれしい』というご両親の率直な感想は、私たちチームにとって大切な気づきになりました」(稲沢)


機能とファッション性を併せ持つ、ユニバーサルなフレアスカート。

14_18.3.21_1728615_18.3.21_1731716_18.3.21_17316

最後にご紹介するのは、頸髄損傷により胸から下にも麻痺がある関根彩香さんのニーズから生まれたフレアスカートです。「実はスカートって、介助が必要な女性にはとてもハードルが高いアイテムなんですよ」。そう話すのは、デザインを担当したブランドディレクターの経験もあるファッションマーケティング部の神出奈央子。

介助者にしてみれば、中心がわかりにくく、車いすに座らせるときシワになりやすいスカートは、とても履かせづらいもの。また、臀部の縫い代の厚みは床ずれの原因になりやすく、風などで捲れたときに自力で直せないこともあり、本人にとっても着こなしにくいアイテムだといいます。実際、関根さんいつもタイトなパンツを着用していたそうです。

それでもフレアスカートの制作を決めた理由について、神出はこんな風に語りました。

「2回目のヒアリングで、私たちが持参したサンプルのスカートを鏡の前で合わせたとき、ご本人がとってもうれしそうで……。介助が必要でも、スカートをファッションとして楽しみたい女性はたくさんいるはず。そう考えると、着脱しやすく、シワにならない、おしゃれなデザインのスカートを作ることには、単なる“ものづくり”を超えた大きな意義がある、と思ったんです」

そこで生まれたアイディアが、ウエストから裾まで伸びる5本のファスナーです。ファスナーを閉めたタイトシルエットの状態で着替え、車いすに移動してから前身頃のファスナーを開けると、タックが開いてフレアスカートに変形する仕様です。また、5本のファスナーはスカートのセンター位置を示すガイドの役割も果たし、重みでスカートが捲れ上がりにくくしてくれます。

逆に、背面には切り替えを入れず、ダーツのみでヒップのふくらみを形成。臀部に縫い目が出ないように配慮しました。座ったときに最適な丈となるよう前面は長く、車いすに巻き込まれないよう背面の丈を短めにするなどディテールにもこだわっています。

「前後差のあるスカート丈は、車いすユーザーにとっては必要な“機能”ですが、健常者にとっては“ユニークなデザイン”になる。これは立つこと/動くことを前提にしたこれまでの服作りをしていただけでは、気づけなかったことです。今回の経験は、誰もが楽しめるユニバーサルなファッションという新しい視点を得るきっかけになったと感じています」(神出)

病気や障がいを抱える人が、ファッションについて感じている”小さな不便”や”ささいな遠慮”。それらを一つ一つ解決していった結果、今までにない魅力的なプロダクトが生まれました。今回ご紹介したアイテムは、こちらのサイトから購入できます(受注生産のみ)。ここでは紹介しきれなかった商品も掲載されていますので、ぜひ一度、訪れてみてください。

誰もがおしゃれを楽しめる世界への挑戦は、これからもまだまだ続きます。今後の〈UNITED CREATIONS〉の展開にご注目ください。

Share -
  • この記事をシェアする

その他の記事

about

継続的な取り組み