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  • ヒト HITO
  • ロールプレイング大会優勝者ふたりが語る、“私の”接客哲学。
  • 2018.03.15 THURSDAY

2018年、接客ロールプレイング大会(RPG大会)で優勝したふたりの販売員が登場。「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング ルミネ新宿店」の川村咲(かわむらさき)さんは商業施設主催のRPG大会で優勝、「ロク ビューティ&ユース 渋谷キャット ストリート店」の栗栖亜矢(くりすあや)さんはユナイテッドアローズ社が主催する社内接客RPG大会「束矢グランプリ」で優勝しました。性格も雰囲気もまったく異なるふたりの優勝者が語る、接客の楽しさ、販売における信条とは?

Photo:Takeshi Wakabayashi
Text:Noriko Oba

普段通りの接客で望んだRPG大会。

—栗栖さんが「束矢グランプリ」に、川村さんが商業施設主催のRPG大会に出場したきっかけを教えてください。

栗栖:私はこういう大会と自分は無縁だと思っていたのですが、4年前に「束矢グランプリ」の〈ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ〉の部内予選会に参加する機会があり、それがこれからも販売員の仕事を極めたいと思うきっかけになりました。初めて出場者の姿を間近に見て、接客に対する想いや大会に対する考えががらりと変わりましたね。

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栗栖:実は、それまで接客の道に絞っていいのか迷いもあったんです。商品を管理したり、分析したり、ディレクターとやり取りをしたり、そういう売り場づくりのほうにも興味があったので。でも、大会に参加してみて販売員にこんなにも素敵な方たちがたくさんいるんだ、私も彼らみたいになりたい、と強い想いがわき上がってきて迷いが吹っ飛びました。それまでも接客は好きでしたが、「接客が好き。店舗にずっといたい」と言うことで、店舗でかわいがってもらえたり、ちょっと打算があったというか(笑)、アピールしている部分もあったと思います。でも販売員として仕事をし続け、社内の優秀な販売員に与えられる称号、セールスマスターになりたいと決心してからは、心底店舗でお客さまと一緒に年を重ねたいと思うようになりました。それで当時の課長にその意志を伝えたところ、販売員としての認知を社内で高めるためにも、RPG大会に出てみたら、とアドバイスをもらったんです。

川村:実は、私も最初はRPGという大会があることすら知らなかったんです。新卒で入って、その年に店長に勧められるがまま出たのが5年前。今年で5回目のチャレンジですが、出場を重ねていくうちに接客や仕事の楽しさ、やりがいを発見していったという感じです。接客ってフワッとした感覚的なイメージでしたが、大会に出ることで、お客様の心情に段階的にアプローチして、空気をつくっていくなど、自分の中に軸というか、物差しができていきました。

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川村:ただ、最初に出場したときは、店舗で行う実際の接客と舞台上の接客があまりにも違って、それに違和感を感じていました。5年の間にそういう“ズレ”みたいなものを少しずつ埋めていき、いちばん素に近づいたと感じたのが今回だったと思います。

栗栖:その違和感、すごくわかります! 私もRPG大会は何度かチャレンジしていますが、やはり普段の自分じゃないというギャップが気になっていました。今回は上司から「普段通り自然体でいい。大会のための練習はしないで」とアドバイスをもらったことですごくラクになったんです。

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—大舞台で普段通り自然体でいるのはとても難しいと思いますが、それがふたりに共通する点ですね。名前が呼ばれたときはどんな気持ちでしたか? 栗栖さんは大会を終えたのが昨日でしたから、まだ感動さめやらぬ状態でしょうね。

栗栖:今だ夢のなかにいるようで、名前を呼ばれたときは信じられなかったです。泣いても泣いても涙が出てきて、昨日の打ち上げの場でも「もうどんだけ泣くの!」と皆から笑われたくらい(笑)。

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栗栖:昨日の大会で付けていたこのアクセサリーは、納期が4月中旬予定だったんです。でも、私がどうしても大会で付けたいと話したら、デザイナーの方が間に合わせて作ってくれて。仕上がったのは、昨日の出番直前! 「磨くほど輝く」という意味の込められたミラーが中についていて、私の一生の宝物です。

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川村:私も名前を呼ばれた瞬間は、えっ…私……?と思ったくらい、あまり実感がわかなったのですが、もう涙だけがブワーッと出てきて(笑)。当日は、1年前の大会に出ていた先輩が“お守り代わりに”とくれたボールペンをポケットに忍ばせていました。あと、この靴にも願いを込めていたんです。同じ館から〈オデット エ オディール〉のスタッフの方も出場すると聞いていたので、一緒に頑張ろうという気持ちで靴は〈オデット エ オディール〉のものを選びました。


歩くスピードやメイク…言葉以外の部分からお客様を捉える。

—大勢の前でのRPGは、緊張しそうです。

栗栖:もう思い出すだけで緊張しますよ。私は普段は人見知りなんてまったくしないのですが、大勢の前に出るとすごく緊張してしまう肝の小ささ(笑)。昨日も最初はガチガチでしたね。

川村:人見知りしないんですか? うらやましいです…。私は実はオフモードのときはかなりの人見知りで、美容院行くのも大変なくらいです。ただ、大勢の前はなぜか全然緊張しないんですよね。

栗栖:えー!! あの舞台で緊張しないなんて信じられない。私たち真逆ですね。

—まったく違うタイプのふたりが、接客の大会の頂点に立ったこともすごいですね。おふたりの毎日の接客についても教えてください。日々、心がけていることは何でしょう。

川村:私がいる店舗は、お客様の入店が多く、メンズもキッズも展開し、しかもカジュアルもオケージョンもと幅広い年代の方がさまざまな目的でいらっしゃいます。お客様はおひとりずつ販売員に求めることが違うので、パッと見たいのか、ゆっくり話してアドバイスが欲しいのか、いろいろ着てみたいのかなど、求めるものを的確に捉えるようにしています。会話から情報を得ることももちろんですが、それでは多くのお客様に当てる時間が足りないので、歩くスピードや話し方、言葉以外の部分を捉えて、今この方は何を求めているのかを想像します。

栗栖:私は、お客様に興味をもって接するように心がけています。お客様の持っているメイクやアイテム、どこかに自分との共通点がないかなと探します。それはファッションとは関係ないものでもいいんです。例えば、お客様がパン屋の紙袋をもっていたら、近隣のパン屋情報をお伝えしたり、仮にその日はロクでお買い物をしなくても、ショップに来ることで少しでも“ハッピーな気持ちになった”という記憶を持って帰ってほしいので。

—では、逆に接客で気をつけていること、やらないようにしていることは何でしょう?
川村:私はマイナスのワードを言わないようにしています。お客さまが「これちょっと地味じゃない?」とおっしゃったとして、私が「地味」という言葉を使うと、想像以上に強く相手の心に残ってしまうと思うんです。共感するとしても、「シックな印象ですよね」と言葉を言い換えて伝えます。これは、自分が接客を受ける立場で感じたことなので、店に立つときは気をつけようと思いました。

栗栖:あぁ…なるほど、それはありますね。私は、ウソをつかないこと。買ってほしい気持ちはあっても、そればかりが先行してどんな洋服でも、「いいですね、お似合いですよ」と伝えても結局長い目で見れば信頼関係は築けないと思うんです。もしも別のアイテムのほうがより似合うと思ったら、さりげなくおすすめします。そのときの提案がどこまで納得感のあるものか、それをていねいに積み重ねていくことが信頼につながると思うので、ひとつの商品に対しても、さまざまなパターンで提案できるよう、商品や素材への知識、コーディネート力をスキルアップさせなくてはならないと思っています。私の場合、ひとつ新しい商品が入って来たら、個性の違うスタッフ全員を思い浮かべて「あの人だったら、このアイテムをどう着るだろう」と肌の色や髪型、体型、ファッションスタイルから想像する。この習慣はもう何年も続けていますね。そうやっていろいろなパターンを自分のなかにつくって、いざお客様がいらっしゃったときにいろいろな視点から提案できるようにします。


今度は自分が誰かの背中を押すことで、恩返しをしたい。

—お客様との間で、何か印象的なエピソードはありますか?

栗栖:数ヶ月に1度静岡県からロクに通ってくださるご夫婦がいるのですが、最近その方からとても嬉しいメールをいただきました。前回いらっしゃった時もコーディネートも含めて全部お任せいただいたのですが、翌日「どのコーデも素敵で着るのが楽しみ。いつも幸せな時間をありがとう」とメールが来て、ご本人はその日体調の悪いなか来てくれたので、少しでも気分が晴れやかになったり、特別な1着に出合えるよう接客したので、それが叶ったのだとしたらすごく嬉しいことです。

川村: 素敵な話ですね。私もセール繁忙期に顧客さまからいただいたスイーツの味は忘れられません。「川村さん、忙しいときにごめんね。お仕事大変だと思うから、時間ができたときに食べてね」と来てくださって。忙しさで緊張していた体の力がふぅと抜けるようで、本当にありがたかったです。こういう感動があるのも接客業をしていてよかったと思う点ですね。

—嬉しいエピソードですね。今回の優勝も、販売員を続けていてよかったと感じられる出来事だったと思いますが、受賞して変化したことや新たにできた目標はありますか?

川村:そうですね…私自身の接客のやり方に変化はありませんが、大会に優勝するとネームバッジの色が変わるんです。バッジは毎日付けるものなので、今日の接客はバッジの色に相応しいかと顧みる機会が増えて、一瞬たりとも気が抜けないし、気が引き締まります。

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川村:目標については、これからは後輩のサポートもしていきたいですね。販売の楽しさって私のように徐々に知る人も多いと思うんです。最初から楽しいと思えなくても、やりたいことが見つからなくても、早々に離職してしまうのはもったいないこと。少しずつ発見していくこともあるよって、体験を交えて伝えていけたらと思います。

栗栖:私は昨日の今日なので変化したことはまだわかりませんが、今までに輪をかけて自分の仕事が好きになりました。店のメンバーやディレクターなどロクチームが、私が優勝したときにあんなにも喜んでくれて、メールもたくさんいただいて、これまで当たり前に接していたのですが、自分はなんて恵まれた環境のなかで働いたんだろうって改めて感じています。ここまでいろいろな人に背中を推してもらって昨日の優勝があるのだと心底思います。私もそろそろ後輩に目を向ける年齢。自分がしてもらったように今度は後輩を励まし、その子の目標とする場所に導いていけるような存在になりたいです。

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