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  • ヒト HITO
  • アーティスト河村康輔さんが紡ぐアート×ファッションの蜜月関係。
  • 2018.02.22 THURSDAY

<ユナイテッドアローズ&サンズ>と<アディダス オリジナルス>のコラボレートコレクション<adidas Originals by UNITED ARROWS & SONS>。今コレクションにおいてロゴデザインを手がけたのが、グラフィックデザイナー、コラージュアーティストの河村康輔さんです。独自のコラージュ手法による「ひずみ」から生まれる世界観が、スポーツウェアにモードな息を吹き込みました。そんな河村さんのレンズを通した“アートとファッションの関係性”について、お話をお聞きました。

Photo:Kousuke Matsuki
Text:Yukino Yagi

服が好きだったからこそ目指した、グラフィックデザイナーの道。

―デザインのお仕事を志したのは、いつごろだったのでしょう?

河村:中学時代から裏原宿系のストリートの雰囲気が好きで、いつか服をつくる仕事ができたらと、漠然と夢を描いていました。高校一年のころ、東京へ遊びに行き、はじめて憧れのブランドの服を目の当たりにした時に「(自分がつくるのは)無理だ」と直感的に感じたんです。と同時に「もしグラフィックデザインができたら、服の『形』はつくれなくても、Tシャツのデザインやロゴという形で関わることはできるかもしれない」と考えるようになったのがきっかけです。

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―高校卒業後は、デザインを専門的に学ばれたのですか?

河村:いや、専門学校には行かず独学なんです。19歳で上京しグラフィックデザイナーを目指したものの、アテもなければ仕事の取り方も分かりませんでした。祖父に工面をしてもらい購入したパソコンで、一日中フォトショップやイラストレーターをいじっていましたね。今となっては、デザインとも言えないような作品ですが。

デザインは、絵だけが重要なのではなくて、フォントや文字の大きさによっても大きく印象が変わります。描いたものを本や画集と照らし合わせて、「どのバランスならかっこいいのか」ということを、手を動かしながら模索していたような気がします。

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叱られながら覚えていった、駆け出し時代。

―そのころの印象に残っている作品はありますか?

河村:最初に手がけたDVDのジャケットです。友人が働いていたレーベルのホラー映画だったと思います。デザインを納める「入稿」という流れについての知識もないので、いろいろと苦戦しました。

発注って、ミリ単位なんですね。印刷業界ではそれを当たり前のこととして指定サイズには単位が書かれておらず、「ケース外寸・横140、縦190」のような指示をいただくんです。当時僕は、何も知らずセンチ単位でデータをつくってしまったんです。それで完成したのは、縦2メートル近くの原画データ。デザイン学校に通う友人から譲ってもらった大容量のディスクにデータを入れて、やっとの思いで納品しました。

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―印刷業者さんは…。

河村:早速「こんな大容量のジャケットデータは見たことない!」と、電話がかかってきました。そこでやっと「ミリだったんだ」と知りました(笑)。

あるときは「この紙に、こんなインクで刷ったらかっこいいと思うんです」と業者さんに伝えたら「それで色が出るわけないじゃん!」と叱られて…。そんなときでも「前に試したときは出来た気がするんですけどね」と知ったかぶりをして、その場を乗り切っていました(笑)。でも内心では、「そういうものなのか!」と。文字通り怒られながら、学んでいきました。デザインだけではなく、印刷についても覚えていかないと食べていけない、と必死でしたね。

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突き詰めたのは、いかに“マイナス”できるか。

-コラージュをはじめたのは、どのような経緯だったのでしょうか?

河村:はじめての作品集の納期まで時間がないなか、ページを埋めるための苦肉の策ではじめました。当時は、写真や原画から比較的ランダムにコラージュをした、今よりもずっと抽象的なものだったと思います。無事に入稿を済ませた帰り、当時からお世話になっていた大友克洋さんにコラージュのデザインを見てもらったら「面白いじゃん!進化させた方がいいよ!」と。そう言ってくれたのが大きなきっかけです。

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-心強い言葉ですね。

河村:でも、どう進化させたらいいのか分かりませんでした。転換点となったのは、2012年の大友さんの原画展『大友克洋GENGA展』です。そこでメインビジュアルを担当させていただいたのですが、機械の一部分など100種類を超える素材を使い、細かく膨大な量のパーツを貼って作品を仕上げました。とにかく貼りました。自分のなかで、重ねていく“プラス”のやり方はやり切った感覚でした。

-なるほど。

河村:じゃあ今度は、どこまで減らしてコラージュ作品をつくれるのかということを突き詰めた時に、「シュレッダーにかけたものを戻したら、“一枚”という最も引き算された、全く別の作品が生まれるんじゃないか」と。

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重要なのは、バランスの見極め。

―河村さんの新鮮な世界観は、究極の“マイナス”によるものだったのですね。今回のコラボレーションのコラージュデザインに関して、意識した点はありますか?

河村:デザインのときはいつもそうですが、「この一枚を貼ったら気持ち悪くなる、逆に一枚引いたら気持ち良い」という、自分のなかの直感を信じるようにしています。とはいえ、ロゴは会社の「顔」。元々のロゴが持つ魅力を崩さない、ギリギリのバランスを探っていきました。躊躇しすぎるのも良くないし、手をかけすぎて読めなくなれば意味をなさないですから。

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今回は服とスニーカーという「身に着けるもの」ということもあり、人との「距離感」も考えました。例えば、5メートル先にこの服を着ている方がいたら、一見普通のロゴに見えるはず。けれど近づいてみるとそこには、いつもの<アディダス>のロゴを裏切るような「ひずみ」があるんです。

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―こうしたアート×ファッションのコラボレーションに込めた河村さんの想いを教えていただけますか?

河村:アートというと高尚に聞こえますが、描くのが紙の上なのか、服の形なのかという、“キャンバスの違い”だけだと思うんです。服にアートを落とし込むなら、「自分が着たいか」という感覚を重視します。その二つは切り離されたものではなくて、それぐらい自然なものだと感じています。

―学生のころからずっと、服がお好きだった河村さんだからこその想いですね。今後の展望を教えていただけますか?

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河村:まず自分が楽しんでいないと人に見てもらえないと思うんです。楽しみながらも、常に進化して作品を作り続けたいですね。続けてきたからこそ、スポーツをしていないのにお仕事をいただけましたし。

実は、少し前にキックボクシングの体験に行ったのですが、あまりに辛くて、その時購入したグローブは事務所の脇にそっと置かれています。

-再開は…。

河村:ある、かもしれないですね。一年後見ていてください(笑)!

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