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  • 全国津々浦々、味わいもいろいろ。お雑煮の旅。
  • 2017.12.27 WEDNESDAY

お正月にいただくお雑煮には50を超える種類があり、その数だけのストーリーがあるって知っていましたか? お雑煮の起源や歴史、地域性など数々のトリビアを「お雑煮研究所」を主宰する粕谷浩子さんに教えていただきました。そして今回は粕谷さんのレシピをもとに、フードスタイリストの板井うみさんにつくっていただききました。さぁ、味わい深いお雑煮の世界をたっぷりと堪能してください。

Photo:Lisa Mogami
Cooking:Umi Itai
Text:Noriko Ohba

関ヶ原ラインで二分していた! あなたは丸餅派?角餅派?

「家で食べるお雑煮はどんな具、どんな出汁? 近くにいる友達や会社仲間と話したら、きっと多種多様さまざまな答えが返ってくると思いますよ」と言う粕谷さん。“お雑煮”と誰もが呼び、これがお雑煮だと思って食べているものは、実は“自分にとってのお雑煮”であり、全国共通同じものではありません。実はお雑煮には、都道府県の数を超えるほどの種類があるのだそう!

「お雑煮の起源を辿れば、平安時代のお公家さんのしきたりが始まりと言われています。室町時代になると、公家文化が大好きな足利義満が、その風習を取り入れ、武士の宴席で振る舞われるようになったとか。江戸時代になると庶民へも広がり、お正月に年神様にお供えするお餅、そのお下がりをいただくようになったのが、現代にも通じるお雑煮です」。

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お雑煮は、ときに政治的な意味合いももったというから驚きです。お雑煮マップを見てみると、全国で丸餅の地域と角餅の地域にわかれます。その分け目にあるのは関ヶ原。ざっくり言うと、西日本は丸い餅、東日本は四角い餅が多く使われています。天下分け目の戦いと言われた関ヶ原の戦いは、お餅の形まで分け、それは現代にも続いている…ということでしょうか。 

「なかでも、石川県は、京文化の影響を受けていますから、白みそ+丸餅が通常ですが、加賀藩のエリアだけは、四角い餅を煮ています。江戸と同じ形の餅を食べることで“私たちは江戸の方を向いていますよ、江戸のやり方に従っています”というメッセージが込められているんです」。

お雑煮の魅力を語り出したら止まらない粕谷さん。お雑煮を研究し、広めるようになったきっかけについて聞いてみると、「私は36歳で大学に再入学し栄養について学びました。当時からお雑煮はおもしろいと感じていたのですが、その後、地域資源活用事業など町おこしに携わるようになったんですね。町おこしには、よく特産物開発が行われますが無理くりひねり出しての、あまり地域の特徴が出ない商品開発の場面も多く、『地域の特徴がわかりやすく出ていて、昔からあるお雑煮こそが町おこしの助けになるのでは!』と思い、研究するうちにお雑煮に魅了されました」とのこと。

お雑煮について知るため地方の銭湯へ赴き、その土地のおばあちゃんたちに話を聞いたり、生の声を集めたりしながら、独自のお雑煮マップが完成。「お雑煮のおもしろいところは、今も変化していること。たとえば、鹿児島人と北海道人が結婚して、両者を組み合わせてハイブリッドなお雑煮が生まれていたり、伝統食でありながら、進化の可能性も秘めています。近い将来、全国のお雑煮を集めた“お雑煮フェス”も行いたいですね」。


知ればつくりたくなる! 美味なお雑煮5選。

全国に数多くあるお雑煮の種類のなかから、今回は、岩手、東京、大阪、広島、福岡の5県のお雑煮レシピを粕谷さんに教えていただきました。

1:岩手「くるみ雑煮」

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「くるみだれにつけるお雑煮、本当においしいですよ。くるみだれは、出汁のかわりに日本酒を入れて大人の味にするのもおすすめ。切り方もポイントで、東北地方は、拍子木切りといって、具材を角柱形にすることが多いのです。また、東北はおせちを食べない場所も多く、正月料理がお雑煮に向けられるため、人参やごぼう、鶏肉などに加えていくらを乗せるなどゴージャスさもあります」。

【材料<2人分>】
角餅2個、出汁(煮干し)400ml、高野豆腐1枚、大根3~4cm、にんじん1/4本、ごぼう1/4本、鶏もも肉50g、せり適量、いくら適量、醤油大さじ1/2、塩少々、くるみだれ適量

【作り方】
1 高野豆腐は水で戻して大根、にんじんとともに千切り、ごぼうはさきがきにして水にさらす。鶏肉は小さめに切る。
2 鍋に出汁を入れて温め、①を入れて火を通す。醤油、塩を入れ、せりを加える。
3 餅を焼いてお椀に盛りつけ、②を入れていくらをのせる。くるみだれを添える。

【くるみだれの作り方】
くるみ60gをフライパンでから煎りして、すり鉢にあけて砂糖30gを加えてよくすりつぶし、お雑煮のだしを大さじ11/2加え、白濁したくるみだれにする。


2:東京「江戸雑煮」

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「品川や大田区の東京出身のおばあちゃんたちに聞いたレシピです。みりんたっぷり、お醤油しっかり、でコクのある汁に仕上げているのがいかにも東京のお雑煮。にんじん、小松菜、シイタケなど彩り豊かに盛りつけています。江戸雑煮を調査すると、なると派とかまぼこ派にわかれ、その比率はなるとが6割とやや優勢。入れると紅白が効いておめでたさもアップしますね」。

【材料<2人分>】
各餅2個、出汁(鰹、昆布)400ml、鶏もも肉1/3枚、椎茸2枚、三つ葉2本、小松菜2株、にんじん輪切り2枚、なると巻き2枚、醤油大さじ11/2、みりん大さじ1

【作り方】
1 椎茸は十字に飾り包丁を入れ、鶏肉はひと口サイズに切る。三つ葉は茎の部分をひと結びにする。
2 小松菜はゆでて5cmくらいに切る。
3 鍋で出汁を温め、鶏肉、椎茸、にんじんに火を通す。あくをすくい、醤油、みりんを入れる。
4 餅を焼き、②、③とともにお椀に盛りつける。三つ葉となると巻きを飾る。


3:大阪「あきない雑煮」

元旦1日目

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「餅の白を“城”に見立て、城は焼いてはならないお餅も焼かない名古屋、するめで出汁を取るのは“けんかするめぇ”が語源など、お雑煮には言葉遊びも多様されています。そのなかで、最もわかりやすいのが大阪。商人の街らしく、「商い」と「飽きない」をかけて、1日目と2日目で具材も出汁も変わる“あきない雑煮”が一般的。定番は、1日目が白みそ、2日目がすまし汁。ユーモアあふれ雑煮の楽しさを追求した大阪らしい一品です」。

【材料<2人分>】
丸餅4個、だし(鰹、昆布)400ml、里芋(小)2個、金時にんじん輪切り2枚、大根輪切り2枚、白みそ60〜65g、三つ葉適量

【作り方】
1 里芋は皮をむく
2 出汁で里芋、金時にんじん、大根を煮る
3 餅は別鍋で柔らかくなるまで煮る
4 ②に白みそを溶き入れ、③とともにお椀に盛りつける。最後に三つ葉を飾る。

2日目

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【材料<2人分>】
丸餅4個、だし(鰹、昆布)400ml、壬生菜(水菜)適量、薄口醬油小さじ2、塩少々

【作り方】
1 壬生菜を適当な大きさに切る。鍋に出汁を温め、薄口醬油、塩を入れる
2 餅を焼き、①の出汁とともにお椀に盛りつけて壬生菜を飾る


4:広島「牡蠣雑煮」

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「牡蠣で有名な広島は、お雑煮の出汁も牡蠣から取ります。牡蠣の濃厚な旨味は、クセになるたまらない美味しさ。栄養もしっかり取れる優れものです。この濃厚出汁にせりが合うんですよね。せりの上品な苦みと、牡蠣の出汁、さらにハマグリを入れることもあり、何とも豪華な広島の雑炊。牡蠣を“賀来(かき)”の字に当てて、福をかき寄せるという縁起もかついでいます」。

【材料<2人分>】
丸餅4個、出汁(昆布)400ml、牡蠣4個、にんじん1/2本、大根2~3cm、せり1株、薄口醤油大さじ1、塩適量

【作り方】
1 牡蠣はかるく湯通しする。にんじんは輪切り、大根はいちょう切りにして下ゆでする。せりはかるくゆでてから、食べやすい長さに切る
2 鍋で餅を柔らかくなるまで煮る
3 別の鍋に出汁を入れ、にんじん、大根、牡蠣を入れて煮る。薄口醬油、塩、餅を加えかるく煮る
4 ③をお椀に盛り、せりをのせる


5:福岡「博多ブリ雑煮」

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「あごとは、北九州地方を中心に取れる“トビウオ”のことで、焼きあごから取るあご出汁は博多雑煮には必須。あご出汁に加えて、欠かせないのが旬のブリ。昔は、雑煮のためのブリを丸ごと一匹買って来て軒先に吊るしておくのが正月の風物詩だった、なんて話も聞きました。さらに、福岡の伝統野菜のかつお菜が加われば、パーフェクトです」。

【材料<2人分>】
丸餅2個、出汁(あご)400ml、干し椎茸2枚、ブリ2切れ、かつお菜2枚、焼き豆腐2切、かまぼこ2切、薄口醤油大さじ1、塩適量

【作り方】
1 干し椎茸は水で戻す。ブリは塩をふってしばらくおき、熱湯でかるくゆでる。かつお菜もかるくゆでる
2 鍋で餅をやわらかくなるまで煮る
3 別の鍋に出汁と干し椎茸と①の戻し汁の上澄みを加え、火にかける。薄口醬油、塩を入れ、焼き豆腐、ブリを加え、温まったら②を加える
4 お椀に盛り、かまぼこ、かつお菜をのせる


今年のお正月は、元旦には恒例の雑煮をいただき、2日目は食べてみたい地域のお雑煮をつくってみるなんてどうですか? いつもと違うお雑煮を味わいながら、その地域に想いを馳せたり、一杯のお雑煮からお正月の楽しみが広がりそうです。

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