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    ユナイテッドアローズのウィメンズプレス水口が聞く、
    〈竺仙〉浴衣との付き合い方。
  • 2017.07.27 THURSDAY

夏を彩る浴衣。ユナイテッドアローズでは2009年より日本橋の老舗〈竺仙(ちくせん)〉の浴衣を展開しています。伝統的な職人たちの技によってつくりだされる浴衣の魅力をより深く知るために、今回は浴衣の老舗〈竺仙(ちくせん)〉社長で5代目当主の小川文男さんに、ウィメンズプレス水口が浴衣初心者代表としてお話を伺います。

Photo:Nahoko Morimoto
Text:Naoko Ando

江戸時代のファッションリーダー歌舞伎役者が愛用した〈竺仙〉の「粋」。

ユナイテッドアローズでは2009年より〈竺仙〉の浴衣を展開しています。現代にも受け継がれる浴衣の美しさについて、創業170年を超える〈竺仙〉の歴史を紐解きます。

水口:〈竺仙〉さんは、創業当時から浴衣ひとすじで続けてこられたのでしょうか。

小川:いえ、初代の仙之助が1842年に歌舞伎座や芝居小屋などが集まっていた浅草に創業、友禅染めの着物を扱う店としてスタートしました。当時の浅草は一番の歓楽街で、さまざまな文化人が集う最先端の場所。そこに集うお客様から、友禅だけでなく小紋を染めてくれと注文が入るようになり、仙之助が“小紋染めの型で浴衣を染める”ことを思いつきました。無地や絞りが主流だった浴衣に自由な柄が染められるようになり、当時のファッションリーダーだった歌舞伎役者にまず愛用されて「江戸の粋」として評判を呼び、江戸市中に広まったそうです。

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水口:柄は、どのように決められているのですか?

小川:初代は、浅草に集う文化人たちとの交流からヒントを得ていたそうです。実際には下絵は職人が描きますが、アイデアを練り、最終決定をするのは、代々当主の役割。伝統柄も含め、毎年1月に1000柄の新作を発表するのが習わしです。

水口:常に時代の「粋」を表現されているのですね。

小川:ひと口に「粋」といっても、イメージは人によってさまざまですし、時代によって移り変わりもあります。代々お客様の評価を指針としていますが、私の場合は、デザインにおける無駄をそぎ落とすことを心がけています。

水口:そのシンプルでベーシックな色柄が、現代の私たちにとっての新しさや魅力に繋がっているのですね。

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小川:浴衣に使われている柄にも色々ありますが、例えば秋の花である「桔梗」は、昔からある柄です。夏に着る浴衣なのになぜ? と思われるかもしれませんが、秋の花をあしらうことで、涼しさを求めたのです。加えて、江戸っ子は先取りが好きですしね。

水口:目で見る涼しさですか。素敵ですね。

小川:それに、浴衣の柄には流行り廃りがありませんので、どれだけ時間が経っても見劣りすることがないんです。何年も前につくった柄を求めにいらっしゃるお客様もいるほどなんですよ。

水口:洋服とは時間の流れ方が違いますね。

小川:そうですね。それが浴衣のおもしろいところでもあります。


染めも型彫りも、すべて手作業。生地は別機で織ったオリジナル。

〈竺仙〉の浴衣といえば涼感あるオリジナルの生地と、そこに施された印象的な柄。それらを作り出す職人たちの技と、創業以来変わることのない〈竺仙〉のこだわりが、江戸の「粋」を現代に伝えてくれています。

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水口:どのような工程で浴衣はつくられているのでしょうか。

小川:まず「型」を作ります。型紙は、和紙を重ねて柿渋で張り合わせたもの。これに図案を写し取って、小刀で彫るのです。

水口:ものすごく細かい作業ですね。

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小川:はい。江戸型彫といいます。この型紙を使って、柄によって染めの方法を変えていきます。たとえば、この菖蒲(写真左より2枚目)と、牡丹と梅の柄(写真右端)は、広げた生地の上に型紙をのせ糊を置き、彫られた部分に糊置きされた後に全体を刷毛で染めます。そうすると、糊の部分が染まらずに、柄として白く残るんですね。これを“引き染め”と呼びます。またこちらの紫陽花(写真右より2枚目)は、生地に型を付けるところは一緒ですが、柄になる部分を糊で囲い、染料を注いで染めるので“注染染め”と呼び、独特のボカシも可能です。

小川:他にも、江戸時代に始まって明治の頃に大変流行し、江戸浴衣の主流であった「長板中形」という染めがあります。約7mの長い板に糊を引き、糊が乾いたら水を吸わせた刷毛で長板を湿らせるんです。そこに生地一反の半分を貼ってその上に型紙をのせて防染糊を置いて、更に残りの半分にも糊置きをします。そして表の型付けが終わったら表の柄に合わせて裏も糊置きするのですが、このときに表裏の柄がずれないようにしないと、後で藍染めをする為カメの中に入れると裏からずれた部分に藍がさしてしまいますので注意しなくてはいけません。

水口:それほどの手間をかけて、なぜ両面を染めるのですか?

小川:一枚で着ることも多い浴衣の裾がめくれた時に、「裏」が見えてしまうのはいかにも「粋」ではないということと、紺と白のコントラストをより際立たせることが理由です。

水口:たまたま裾がめくれた時の足元も美しく見せたい、という江戸の粋を今に伝えるために、技術もまた継承されているのですね。「おしゃれ」の何たるかを教えていただいた気がします。生地にもいくつか種類がありますが、どういった違いがあるのでしょうか。

小川:ここにある菖蒲と紫陽花のものは「綿絽(めんろ)」です。縦糸に対して、緯糸(よこいと)の間隔をあけて織られているので、風が通って涼しげです。〈竺仙〉では等間隔ではなく、あえて7分、5分、3分と変則的なパターンで折り込んでいるため「乱絽(らんろ)」と呼んでいますが、これによりきれいなモワレが出るんです。

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小川:一方、牡丹柄のものは「紅梅(こうばい)」という生地になります。これは太めの糸で格子状の凹凸が織り出されています。この生地の凸凹の勾配を〈竺仙〉では「紅梅」と呼んでいます。

水口:すべてオリジナルで作ってらっしゃるんでしょうか。

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小川:いずれの生地も市場品を仕入れているのではなく、すべて別機で織られたオリジナル生地になっています。浴衣は、モノによってはしばらく着ると生地がヘタってしまうことがあるといいますが、〈竺仙〉の生地はハリがあるので糊付けする必要もなく、長くシャキッと着ていただけます。ヒザやお尻の部分が伸びたりすることもありませんので、安心して、どんどん着てください。

水口:何度着てもきれいな形を保ってくれるというのはうれしいですね。浴衣に対するハードルをまたひとつ超えられそうです。


浴衣を平服ととらえれば、どんなときに着るのかが判断できます。

日本の夏には欠かせない存在でありながら、浴衣を着る場面は花火大会や縁日などのイベントに限られがちです。実は一番知りたい“日常のなかの浴衣”についてお伺いします。

水口:浴衣はとても好きなのですが、着て行くシチュエーションについていつも悩んでしまいます。

小川:昔は「浴衣がけでお越しください」という言い回しがありました。現代風に言うと「平服でお越しください」という意味です。最近ではファッション全体が少しずつカジュアル化していますので、浴衣で出かけられる範囲も広がってはいますが、浴衣は着物とは違って“夏のふだん着”だということをまず頭に入れておきましょう。

水口:着方によっても違いがありますか?

小川:そうですね。簡単な肌着の上に着て、足元も裸足に下駄というスタイルは涼しげで、たとえば花火大会やお祭りにぴったりです。お襦袢の上に着て帯締めを締め、足袋を履くと、あらたまった印象になります。たとえば畳敷きの御座敷で食事をしたりする場合、裸足で畳の上を歩くわけにはいかないので足袋を履くなど、出かける場所がどんな所なのかを考えてコーディネートするとよいかと思います。

水口:歌舞伎などの観劇に浴衣を着て行くのはいかがでしょうか。

小川:例えば歌舞伎座や国立劇場などでは、絹絽や絹紗などの夏着物をピシっと着ている方が多くいらっしゃいます。そういう場では、やはり浴衣は少し居心地がよくないかもしれません。でも反対に、昔の芝居小屋のような雰囲気の劇場では、浴衣のほうが風情が出ますし、レストランなんかの場合でもおとなしい印象の夏着物より華やかな柄の浴衣のほうが映えることもあります。これも、出かける先のイメージに合わせて考えるとよいですね。

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水口:そうなんですね。今日はいろいろとお話しを伺えて勉強になりました。 これからは“夏のふだん着”として、浴衣を楽しむ機会が増えそうです。

小川:とにかくたくさん着ていただいて、着慣れてもらうことが大切なんです。着物でも浴衣でも、着慣れていらっしゃる人が一番格好が良いんです。

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