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  • 主催・重松 理、スタイリング・亘つぐみ。ふたりの声から紐解く「Mon YVES SAINT LAURENT」。
  • 2016.12.08 THURSDAY

昨年の10月に開催され大好評を博したオールドコレクション展示会「Mon YVES SAINT LAURENT」が再び、銀座のポーラ ミュージアム アネックスにて12月10日より開催されます。このイベントは、80年代のヒットソング「雨音はショパンの調べ」で知られる小林麻美さんが所有していた180着にも及ぶヴィンテージのイヴ・サンローランのウェアを日本服飾文化振興財団へ寄贈したことがきっかけでスタートしました。財団の代表理事であり株式会社ユナイテッドアローズの名誉会長を務める重松 理さんと、今回の催しのスタイリングを手掛けたスタイリストの亘 つぐみさんに「Mon YVES SAINT LAURENT」についてお話を伺いました。

Photo:Yuhki Yamamoto
Text:Masaki Hirano

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ファッション業界をつぎの世代へゆだねる。

―まず日本服飾文化振興財団はどんな想いで設立された団体なのでしょうか?

重松:設立は約3年ほど前になります。私は株式会社ユナイテッドアローズの取締役を退任するにあたって、なにかつぎの動きを考えていました。これまでファッションビジネスに深く携わり、この業界に育ててもらった恩返しのようなことをしたいなと思いました。若い世代の方々に業界を引き継ぐにあたって、彼らにとって意味のある施設をつくりたいと思っていたんです。

―それがこの財団の目的であると。

重松:そうです。会社のなかには古い洋服のサンプルがたくさんあったので、それを新しいデザインに活用したり、資料として使えないだろうかと考えていました。たまたまそれと同じ時期に、以前より長くお付き合いがあった生地屋の元社長の方が膨大な生地の資料をお持ちということで、その資料を軸に、財団として広く多くの方に閲覧いただけるように設立したんです。

−「Mon YVES SAINT LAURENT」はどういった経緯で行なうことになったのですか?

重松:財団を立ち上げたあと、いろんな方に設立のお知らせをしたんです。そのなかでモデルの小林麻美さん(現在は財団評議員)とお話をしていて、彼女が60年代から集めているイヴ・サンローランのウェアが家にずっと保管されたままになっているということだったんです。くわしく聞くと、60年代から70年代のものを中心に180着にも及ぶ量が、ずっと大切に仕舞われていたままである、と。それならば、それらの品々を若い人たちに見てもらってファッション業界のつぎのステップに繋げられればということで「Mon YVES SAINT LAURENT」を企画しました。

−なるほど、そうだったのですね。

重松:小林さんも自分の洋服がそうして有意義に使われるのであれば是非、ということで財団に寄贈いただいたんです。

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2回目は、より幅広く、多くの人に観てほしい。

―昨年行なわれた1回目の催しではランウェイショーをされました。そして今回は映像でショーを見せるということなのですが、これにはなにか狙いがあるのでしょうか?

重松:まず、どうして2回目を行うかというと、1回目の開催で非常に高い評価を各方面から頂戴したからなんです。ただし、ランウェイのショーというのはその場にいないと見ることができない。それは非常にもったいないと感じました。もっと幅広い方々に見ていただくために映像に収めて、それを流しながら実際に商品も見ていただこうということなんです。

―亘さんは前回と同様に今回もスタイリングを手掛けられていますが、どんなお気持ちで参加されたのですか?

亘:私がファッションに目覚めた頃、指をくわえるようにして眺めていたのが当時のイヴ・サンローランだったんです。憧れの洋服を使ってファッションショーができるなんてすごく光栄なことだし、うれしい気持ちで胸がいっぱいでした。1回目のショーを開催するにあたって実際に小林麻美さんにお話を伺う機会があったんです。そのときに小林さんの洋服に対する想いを聞いて、好みや考え方に共感することがたくさんあったので、楽しい気持ちで本番を迎えられました。

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―今回は2回目ということで、前回とは違う工夫はされていますか?

亘:前回とおなじようにイヴ・サンローランのオリジナルのアイテムだけで組んだコーディネートと、ユナイテッドアローズのブランドのアイテムとミックスさせたコーディネートの2種類を組んだんですが、今回は現代のファッションとリンクするスタイリングを意識しました。むかしのイヴ・サンローランっていまのファッションと通づるものがあるんです。私自身、ストリートファッションもすごく好きなので、そういった感じを表現できたらなと思いました。

―重松さんはスタイリングなどに対して、なにかリクエストはされたのですか?

重松:まったくなにも(笑)。映像に収めましょうということだけをお伝えして、あとはスタッフの方々にお任せしましたね。

亘:本当に自由にやらせてくださって、すごく楽しかったですよ(笑)。


小林さんの想いに応えたい。その一心でスタイリングを手掛けた。

―イヴ・サンローランのアイテムだけでつくるコーディネートと、いまのアイテムをミックスさせたコーディネートでショーを構成しようというのは、どなたの考えなのですか?

重松:プロデューサーとして参加いただいてる若槻善雄さんのアイデアだったと思います。

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―むかしの洋服を使って現代的な表現をするというのはすごく難しいことのように思うのですが、スタイリングを手掛けるなかでなにかご苦労はありましたか?

亘:それがまったくないんです。憧れの洋服だったので気持ちが高ぶってしまって(笑)、終始楽しくコーディネートさせてもらいました。むかしのものだからといって全然見劣りせず、むしろすごく光って見えたんです。ミックスしたコーディネートでは、いまのアイテムがイヴ・サンローランのウェアに引っ張られてより一層素敵なものに見えましたし。

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―コーディネートは何体くらい組まれたのですか?

亘:ショーで使うのはオリジナルで35体、ミックスで35体の計70体なんですが、使わなかったものも含めると今回は全部で100体近くコーディネートしました。これは小林さんのお洋服が180着もあったのと、ユナイテッドアローズのサポートがあったからこそ。みなさんにご協力いただけたから素敵なものをさらに魅力的に表現することができました。

―小林さんの服もすごく輝いてますね。

亘:そうなんです。それに保存状態がすごくよくて、傷もないし、ボタンが欠けていることすらなかった。小林さんにとって本当に大切なものだったんだな、ということが手に取るようにわかるんです。トレンチコートは小林さんがはじめてのデートで着たアイテムだと仰っていましたし、そういったひとつ一つのお洋服に対する想いに応えたい、その一心でスタイリングを組みました。

―重松さんはこの2回のイベントを通してなにか伝えたいことなどはあるのでしょうか?

重松:伝えたいこと…、うーん。私はなにかを伝えたいというよりも、ただただ見てもらいたかったんです、眩しいほど光り輝いていた当時のイヴ・サンローランを。今回スタッフの方々がむかしのイヴ・サンローランを別の角度から光を当てて新しいものとして甦らせてくれた。こうゆうことをすることで、いろんな人に注目してもらえるじゃないですか。ファッションの楽しさや躍動感をいまの若い世代に見て欲しい。ただそれだけですね。

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ふたりにとってのイヴ・サンローランの存在。

―今回のイベント名「Mon YVES SAINT LAURENT」を日本語に訳すと「私のイヴ・サンローラン」ということになるのですが、おふたりにとってイヴ・サンローランというブランドはどのような存在なのか教えてください。

重松:私は73年にファッション業界へと足を踏み入れたんですが、当時からパリコレのデザイナーといえばイヴ・サンローランが代名詞のような存在でした。日本でも購入できたんですが、限られたお店でしか取り扱いがない上にやはり値段も高くて買えなかった。つまり“憧れ”なんですね。モードの最高峰でありながらデザインが非常にわかりやすい。私はとくにディテールが好きでした。ステッチ幅とかが個性的でバランスがよくてね。メンズ服を企画することがあったんですが、このブランドの洋服を参考にすることもありました。

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亘:私も重松さんとおなじように憧れのブランドですね。けど、やっぱり高くて買えなかった(笑)。当時、イヴ・サンローランをコピーしていたブランドがあって、私はそのブランドの洋服を着たりもしていました。だから、小林さんのお洋服を最初に拝見したとき「これが本物なんだぁ」って、すごく感慨深い気持ちになりました。

―2回目は12月10日からの開催ですが、頭のなかには既に3回目の構想もあったりされるのですか?

重松:2回目をみなさんにご覧いただいて、そのリアクションによって考えてみたいと思っていますが、いまのところはなんとも答えられないですね。

亘:今回のお洋服は本当に宝物なので、ご覧いただくみなさんにとってもなにか影響を与えられると思うんです。なので機会があればチャレンジしたいと思っています。

―日本服飾文化振興財団では、なにか今後の活動として考えられていることはあるのでしょうか?

重松:財団に関わる活動は大きく3つあります。資料館の運営、若手デザイナーへの助成、そしてファッションに関わるセミナーの開催。この3つを通して、つぎの世代の後押しをしたい。設立してまだわずかですが、これから紹介するものも増えてくると思いますし、それを幅広くみなさんに見てもらいたいですね。それがいまの気持ちです。

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